Steve Barrowの詳細なライナーノーツが嬉しいルーツ専門再発レーベルBlood & Fire さら2枚同時に編集盤が出たが、その2枚を併せた限定パックが出ている。 King Tubby & Scientists "Greenwich Farm Rub A Dub" (Blood & Fire, BAFCD1001, '96, 2CD) Greenwich Town, Kingston, JAで70年代後半に活動したFreedom SoundsとRoots Traditionという2つのレーベルのそれぞれの編集盤CD2枚に、付録として20ページの カラーブックレットを付けて、シリアルナンバーの入った紙のケースに入れた 限定パックだ。 付録のブックレットはGreenwich Townの写真集といった類のもので、ライナー ノーツはなく特に資料価値があるものではない。限定パックを入手できなくても、 それによって得られなくなる録音データや詳細な解説があるわけでもない。 それぞれのCDは限定ではなく売られているものなので、聴かれなくなる音源もない。 そういう心配りを見せながら、コレクタを刺激する限定パックを出すのがにくい。 全体として統一感のあるデザインはもちろんIntro。Greenwich Townで撮影した 写真を多用しているので、今までのIntroのデザインと若干違う印象を受けるが、 優れたデザインであることにはかわりない。 それでは、中身の2枚について。 King Tubby & Soul Syndicate "Freedom Sounds In Dub" (Blood & Fire, BAF011, '96, CD) - 1)Ethiopian Version 2)Leaving Babylon Dub 3)Dub The Right Way 4)Salty Dub 5)Seaview Corner Rocking 6)Dub Of Righteousness 7)Great Stone 8)Empty Vessel Dub 9)Israelite Children Dub 10)East Avenue Skank 11)Tinson Pen Dub 12)King Tubby's Key 13)Jah Is Coming In Dub 14)Confusing Dub 15)Top Line Special - Produced by Bertram Brown for Freedom Sounds, '76-'79. Recorded at Randy's Studio and Channel One Studio. Mixed by Osbourne `King Tubby' Ruddock at King Tubby's Studio. Rhythm played by Soul Syndicate. Bertram BrownのレーベルFreedom Soundsのシングルのヴァージョンを集めたもの。 演奏はEarl `Chinna' Smith率いるSoul Syndicateで、King Tubbyによるダブだ。 Bunny Lee制作The Aggrevators演奏のKing Tubbyのダブと大きく変わるところは ないように思う。 Steve Barrowは7曲目の"Great Stone"をジャングルの先駆けといえるダブだと 言っている。実際に聴くとジャングルというほどではないが、複数の時間が流れる 感覚が良い。ルーツ期の特にダブにおける「サウンドの階層」の解消がいわゆる リズムをリズムキープの役目から解放したことが、このような複数の時間が並立する 感覚を生んでいるように、聴いていて僕は思う。 このCDで最も嬉しいのは、収録されているヴァージョンの元歌がライナー・ノーツに 記載されていること。今後もできるだけそうして欲しいものだ。有名なトラックを 使っている曲はトラック名までつけてくれると、もっと嬉しいが。 Scientist "Dub In The Roots Tradition" (Blood & Fire, BAF012, '96, CD) - 1)King Tubby's Answer 2)Dub Bible 3)Dub 16 4)Pick Up The Dub 5)Don't Rush The Dub 6)No Dub Island 7)Love You Dub 8)When I Love Dub 9)See A Dub Face 10)One Man Dub 11)Sunshine Version 12)Dub Livity 13)Babylon Fight Dub 14)African Daughter Dub 15)Home Version - Produced by Errol `Don' Mais for Roots Tradition, '76-'79. Recorded at Dynamic and Channel One Studio. Mixed by Hopeton `Overton' Brown aka Scientist at King Tubby's Studio. 1,2,4,5,10,11,12,14,15 played by Soul Syndicate. 3,6,7,8,9,13 played by the musicians who went on to become known as Roots Radics. 一方こちらはErrol `Don' MaisのレーベルRoots Traditionのシングルの ヴァージョンを集めたもの。演奏はEarl `Chinna' Smith率いるSoul Syndicate と後にRoots Radicsと呼ばれるStyle ScottやErrol Holtらの演奏。ミックスは King Tubby門下のScientist。 音数が良く絞りこまれた禁欲的なダブは、意外と80年代初頭のDub Syndicateや Dennis BovellなどのUKレゲエのダブに通じるような気がする。 しかし、こちらのライナーノーツには収録されているヴァージョンの元歌が載って いない。これは残念。 というわけで、もちろん、中身も聴き所のある興味深い2枚だ。 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕