beatboxing。hip-popを構成する5大要素でありながら、主流hip hopにおいては 今ではすっかり時代遅れとされている感がある一方、このbeatboxingを主とする hip-hopであるelectro hip-hopが見直されてきているようにも思う。Rhinoのhip-hop 編集シリーズ"Stread Jams"の"Electric Funk"編の4枚や、Mastercutsの"Classic Electro"シリーズのような再発盤も出ている。安っぽいリズムボックスのピコピコ チキチキいう背景に時にボコーダーでの喋りもはいるそんなhip-hopだ。 そもそも、初期においてはelectroがhip-hop主流とも言えるものだった。Grandmaster Flash & The Furious Five "The Message" (Sugarhill, '82)やAfrica Bambataa & Soulsonic Force "Planet Rock" (Tommy Boy, '82)もelectroだ。 Harbie Hancock "Rock It" ("Future Shock" (Columbia, '82)所収)の素晴らしく笑えるビデオクリップ を当時観たことがある人もあるだろう。New Order "Confusion" (Factory, '83)など electro無しにはありえない音だろう。 Various Artists "It's All Coming ..." (Clear, CLR400CD, '96, CD) - 1)Angry Dolphine (Plaid) 2)Tiz (Clatterbox) 3)How Do You Do (Doctor Rockit) 4)Juicy Jazz Girl (Jade Gates mixed in the bubble by Plaid) (GFQ) 5)Montis (Clatterbox) 6)K-9 Law (Spacepimp) 7)EDP Blues (GFQ) 8)Gosheep (Gescom) 9)Hold Me Close (GFQ) 10)Photos & Pebbles (Doctor Rockit) 11)Oi, That's My Bird (GFQ) 12)Angry Dolphine (unreleased mix) (Plaid) 13)'Bad' Means Good (Clatterbox) 14)Looprode (Doctor Rockit) Clearは'95年頃からelectro hip-hopの影響を強く感じるtechnoを多くリリースして いるレーベルだが、そのレーベルを概観する編集盤がこれだ。Richard D. James (a.k.a. Aphex Twin)のレーベルRephlexのスタッフが分かれて作ったレーベルだ。 Plaid (ex Black Dog)、Gascom (a.k.a. Autechre)といった、その筋の人も名を 連ねている。 Dockor Rockitのような名前からしてelectroを想起させるものもあるが、全く かってのelectroのような作品というわけではない。あくまでWarpレーベル界隈の technoを通過した後のそれといえるだろう。しかし、オープニングを飾っており この編集盤のベスト・トラックともいえるPlaid "Angry Dolphine"や、Clatterbox "Montis"で特に特徴的なピコピコチキチキした音こそが、ここに詰まっている 音の魅力だ。 さて、この編集盤では収録されていないが、Clearの出世頭といえば、やはり、 Mike Paradinas (a.k.a. Mu-Ziq)のelectroでの名義Jake Slazengerだろう。 去年のJake Slazenger "Makesaracket" (Clear, CLR410, '95)に続いて、ついに Warpから2ndをリリースした。 Jake Slazenger "Das Ist Ein Groovybeat, Ja" (Warp, WARPCD42, '96, CD) なぜかドイツ語の題名だが、electroだってグルーヴィなのさ、とでもいう感じの 題名にMike Paradinasの意気を僕は感じたい。が、いまいちしゃれッ気に欠ける ような気がする。"King Of The Beats"のようなもろelectroな曲がもっとあると いいのに。ほとんどelectroではないシングルカット曲"Nautilus"のほうがいい 曲に聴こえたりするのも、納得いかない。 しかし、Jake Slazengerに続いてWarpからもelectroな作品が出てきて一気に流行 したりするのだろうか。bpmが遅いなどビート感がtechnoと異質な所もあるので、 そう流行しそうもないと思うが。個人的はこれでギクシャク踊ってみたい。 といっても、今さらUSのrap/hip-hopの文脈でelectroが再び注目を集めることは ないと思う。Clearのようなelectro的なtechnoをリリースするレーベルがUKから 登場したことは、むしろUKやFranceでのabstruct hip-hopの盛り上がりとも関係ある ように思うし、むしろその文脈で注目すべきなのかもしれない。 96/8/17 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕