ClearレーベルのDoctor Rockitの名を見て思い出したのが、Harbie Hancockの名曲 "Rock It"。Bill Laswellの制作による'82年にヒットしたscratchを派手に使った hip-hop作品だ。マネキンがギクシャク動くビデオクリップも秀逸なもので、 当時TVで何回も観たし、もう10年以上観ていないはずなのに今でも印象に残っている。 そして、"Rock It"を収録したHarbie Hancock "Future Shock" (Columbia, '82)や、 当時のMaterialに参加してhip-hop色を持ち込んでいたDJが、Grandmixer D.STだった。 その後hip-hopがメジャーになっていく中、彼の名前を聞かなくなっていたが、 ここにきてDXTと名前を変えて復活した。やはり、Bill Laswellの後ろ立てだが。 Various Artists "Altered Beats" (Axiom, 162-531 046-2, '96, CD) - Generated by Bill Laswell. Art and Ionic Treatise: Rammellzee - DJ Rob Swift (X-Man), DXT (Grandmaster D.ST), Prince Paul, DJ Krush, Invisible Scratch Pickles, New Kingdom, Valis, Spectre, Material このBill LaswellのAxiomレーベルから出たhip-hopの編集盤は、USのhip-hop/rapの 流れから大きく孤立したもののようでもあり、UKやFranceでむしろ盛り上がっている abstruct hip-hopのUSからの反応とでも言えるものになっている。実際、DJ Krushの ように、Mo'WaxレーベルからリリースあるDJも参加している。重く沈んだloopから なる背景と派手なscratchからなるもので、rapはない。もちろんelectroでもない。 Jah WobbleやBootsy Collinsの参加など、Bill Laswellならではの豪華さなのだが、 こういう企画ならでのつまらなさ、というのもある。狙いすぎというか考え過ぎと いうか。Axiomからの作品ということで覚悟はしていたが。 期待したDXTもたいしたことはなかったが、その一方、14曲中2曲を担当している Invisible Scratch Picklesが面白かった。DJ Q-Bert、DJ Disk、Shortcut、 Mixmaster Mikeからなるチームのようだが、曲の間じゅう休みなくscratchして いるといった感がするほど、無節操だ。これだけでも、聴きものだったし、 もっとこのInvisible Scratch Picklesの作品を聴いてみたい気がしている。 96/8/17 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕