Grandmaster Flash, Melle Mel & The Furious Five "The Adventures Of" (Rhino, R2 72467, '96, CD) 素晴らしいリイシューで知られるRhinoから、Sugarhill関係のrap/hip-hopのCDが 2枚出た。80年代初頭のSugarhill GangやGrandmaster Flash & The Furious Five といったSugarhillレーベルのrap/hip-hop勢の活躍については、いまさら多くを語る 必要は無いと思うが、その割にはちゃんとした形で再発されてこなかっただけに うれしい再発だ。ちなみに、もう一枚は"Rappers Delight"で知られるSugarhill Gang のものだ。 Grandmaster Flash, Melle Mel & The Furious Fiveに関しては、2年前の Grandmaster Flash, Melle Mel & The Furious Five "The Best Of" (Rhino, R2 71606, '94, CD) の続編である。これには、初期の"Freedom"から、がしっとした音とコンシャス・ リリックになってからの"The Message"、"New York, New York"、"White Lines"と いった80年〜84年の名曲がほぼ収録されている。後にOn-U SoundのTack Headと して知られることになるFats Comet (Doug Wimbish, Ship McDonald, Keith LeBlanc) の叩き出すひきしまった背景も聴き物だ。初期のbeatboxingがまたhip-hopの主要な 位置を占めていた頃の作品ということもあり、electroな面も一聴の価値がある。 致命的な欠陥は"The Adventures Of Grandmaster Flash On The Wheels Of Steel"が 収録されていない、ということだった。 この"The Adventures Of"には、題名からうかがえるが、もちろん"The Adventures Of Grandmaster Flash On The Wheels Of Steel"が収録されている。この曲はbreakbeats の古典といえる作品で、この3台のターンテーブルがあみ出す過激なつぎはぎは、 今でも一聴に値するものだ。 その他"Flash To The Beat (Part I)"や"Jesse"といった"Best Of"で漏れていた 名曲も収録されており、この2枚で主要な曲は全て聴くことができる。 "The Adventures Of"には、さらにそれ以降'87年までの'83年に分裂しElektraに 移籍したGrandmaster FlashとSugarhillに残ったGrandmaster Melle Melによる曲が 多く収録されている。Fats CometもTommy Boyに移りここにはもういない。当時も 興味が無く聴いていなかったが、今これを聴くと、分裂以降急速にその魅力を 失っていったことが判る。"The Best Of"が、素朴なhip-hopからコンシャスで ヘヴィなhip-hopへの道だとしたら、"The Adventures Of"は、ダメにいった様子を 捉えたようで、後半は聴くに堪えない。 US盤ということもあるのだろうがリリックが無いのが惜しまれるが、ライナー ノーツや録音データ、ジャケットのデザインまでRhinoならではの丁寧な仕事は良い。 ちなみに、この手の編集CDとしては、日本盤の Grandmaster Flash & The Furious Five "The Best Of" (P-Vine, PCD-2534, '91, CD) がある。このCDはもっとも良かったころだけを捉えた無駄の無い選曲と、ライム 聴取が付いているのが良い編集盤だが。メンバーがカタカナ表記しかない、など、 いまいち資料性に欠けるうえ、デザインもださい。さらに3,193円 (今はもっと 安価になっているのだろうか。) という定価では、輸入盤で1,600円余りで売られ ているRhinoのCDと比べても価格的に魅力に欠けるのだ。 P-Vineのリイシューもそこそこいいレベルのものが多いだけに、Rhinoに負けない 日本の誇れるリイシューレーベルになってほしいものだ。 96/8/17 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕