Massive Attack "Protection" (Wild Bunch, '94)から2年、今さらtrip hopも無い のかもしれない。それをtrip hopと言うか別として、"Protection"やPortishead "Dummy" (Go! Discs, '94)にしてもそうだが、'94年にはスタイルとして完成を見た 感もあり、その先に展開があまり無いような気もしていた。 ground beatの呪縛から逃れられず失速したSoul II Soulを横目に2nd "Protection"を 出したMassive Attackが、次にtrip hopの呪縛からどう逃れられるのか興味があるが。 その作品参加していたEverything But The Girlが"Walking Wounded" (EBTG, '96)で "Protection"のようなtrip hop的な音をほとんど使わなかったのは正解だったとは 思う。おそらく二番煎じ程度のものにしかならないだろうから。それでは、同じく "Protection"に参加していたNicoletteはどうだろう。 Nicolette "Let No One Live Rent Free In Your Head" (Talkin Loud, 532 634-2, '96, CD) - Produced by Nicolette, Plaid, Dego, Alec Empire, etc Plaid (ex Black Dog), Dego (4 Hero, Tek 9, Jacob's Optical Mouse), Alec Empire (Atari Teenage Riot)などと豪華な制作陣を揃えたNicoletteのソロは それなり質の曲をヴァラエティを持って揃えている作品。やはり、trip hop色は ほとんどなくtechno〜drum'n'bass色濃い作品になっている。 だが、CDで聴くと散漫。Nicoletteの歌声の甘さもあるのかもしれないし、ほとんど 自作ともいえる曲にNicoletteの個性らしきものが感じられない。歌詞もつまらない。 制作者の色に染まり過ぎな気もする。自身の制作のピアノ弾き語り("Judgement Day") ともなると恐ろしくつまらない。 流行の音のショーケースとしては悪く無いかもしれないが、シングルでリミックスを 楽しんだ方が楽しめるだろう、良くも悪くも素材的な人だ。techno〜drum'n'bassの アイドルといったところなのだろうか。 さて、trip hopといえば、Tricky "Maxinquake" (4th & B'way, '95)の次の展開は どうだろう。 Nearly God "Nearly God" (Durban Poison / 4th & B'way, DPCD1001, '96, CD) こちらはTricky制作によるNeneh Cherry, Bjork, Alison Moyet, Terry Hallなど 豪華な歌手陣を揃えた作品。といっても、ポップさは全く無い重苦しい観念的な 作品になっている。考えすぎ。ビートの欠如が逆に曲に対する批判精神の欠如に 繋がって、つまらない。Howie B "Music For Babies" (Polydor, '96)にしてもそう 思うのだが、いかがわしい内面性 (by Roland Barthes) に走っている感すらある。 これじゃあ、70年代のrockと同じじゃないか、という気もする。 といっても、"Maxinquake"−これはあまり良い出来とは思わなかった。−よりは 良い作品だと思うのだが。しかし、この先に展開があるとはあまり思えない閉塞 的な作品だと思う。"Maxinquake"の時点で、この"Nearly God"での試みの半分でも 試しておくべきだった。 96/8/25 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕