はい、こちらTFJです。実は3〜4ヶ月前に買っていたのだけど、なんとなく紹介する タイミングを逸していたものを。愛聴しているので、紹介したい。 A.D.D. Trio "Instinct" (L+R, CDLR45104, '96, CD) - 1)Instinct 2)ReDug Me Not 3)Steam 4)Cerulean Blue 5)Twists And Turns 6)Way Up There 7)Magmas 8)All The Time, Anyway 9)Next - Recorded 95/2/4-5 - Steve Argueelles (ds,prec), Robert Dick (picc,fl,bass fl,F-bass fl,contrabass fl) Christy Doran (el guitar,delay devices) Ray Anderson, Han Bennink, Christy Doran "Azurety" (hat ART, CD6155, '94, CD), "Cheer Up" (hat ART, CD6175, '95, CD)の2枚も素晴らしいChristy Doranが参加して いるこのA.D.D. Trioは、A.B.D. Trio、特に"Cheer Up"のバリエーションともいえる。 "Instinct"は"Cheer Up"と、"Twist And Turns"は"No Return"と同じ曲だ。("Cheer Up"、"No Return"はともに"Cheer Up"に収録。) こうして聴きくらべると、実はよく作曲されているのだな、と思う。Ray Anderson, Han Bennink, Christy Doranの場合、trombone、drums、electric guitarの緊張感 溢れる絡みが面白い作品だったけれども、このA.D.D. Trioはそのtromboneがfluteに 置き変わったもの。Christy Doranのgはあいかわらず、dsのSteve ArgeellesもHan Benninkに負けず頑張っているのだろうけど、ここですごいのはflのRobert Dick。 多彩なRay Andersonのtromboneに負けていない。音の性格が違うのでどちらが良い とはいいかねるが、Ray Andersonのtromboneのノリの良さとは別の、ちょっとエキゾ チックな感じもよい。 Robert Dickはマルチfl奏者で、piccoloからcontrabass flute (縦に抱えるようにして 吹く巨大なfluteらしい。) まで操り、おおよそfluteだけとは思えないいろいろな音を 吹きまくっている。この作品で初めて聴いたが、とても面白い。 ライナーノーツによると、Robert DickとChristy DoranはともにJimi Hendrixの カバー集を出しているという。(この"Instinct"ではJimi Hendrixの曲は演奏して いないが。) Doranの方は、もちろんPhil Mintonの歌が爆笑もののDoran, Studer, Minton, Bates, Ali "Play The Music Of Jimi Hendrix" (Intuition, INT2134-2, '95, CD)なのだが、Robert Dickの方にも興味を持ったので、さっそく聴いてみた。 Robert Dick "Third Stone From The Sun" (NewWorld / CounterCurrent, 80435-2, '93, CD) - 1)Third Stone From The Sun 2)Greenhouse 3)Pali Gap 4)It's Still Like It Wouldn't Be Yesterday 5)Tycho 6)Purple Haze 7)Voodoo Child (Slight Return) - Recorded 93/1/14-15 - Robert Dick (fl,alto fl,bass fl,F-contrabass fl,A-flat picc), Jerome Harris (bass g,acoustic bass g,acoustic g), Jim Black (ds); The Soldier String Quartet [Laura Seaton (vln), Dave Soldier (vln), Ron Lawrence (viola), Mary Wooten (cello)]; Shelley Hirsch (vo), Marty Ehrlich (b cl) on 1 Jimi Hendrixのカバー中心という制約もあり、"Instinct"ほど奔放な感じではないし、 それほど緊張感は高くない。正直言ってちょっとものたりない。 しかし、Jimi Hendrixのguitar演奏をfluteで演奏しよう、という発想は好きだ。 特にライナーノーツの、フルートにエフェクト・ボックスとペダルを付けてみたが カズー笛のようにしかならずうまくいかなかった、などと書かれている下りを読むと、 思わず好感を持ってしまう。bibliographyに"Circular Breathing for the Flutists" と題された本も載っており、fluteで様々な演奏を試みてみるのが好きな人のよう。 ちなみに"Greenhouse"はA.D.D. Trioで"Cerulean Blues"として演奏されている。 A.D.D. Trioは今までの曲を持ちよってという色がまだ強いのかもしれないが、 Robert Dickが新たな奏法を編み出していくにはいいトリオのような気もする。 A.D.D. Trioで、今度は新曲中心でRobert Dickの超絶演奏を、ぜひ期待したい。 96/9/20 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕