Kronos Quartet "Howl, U.S.A." (Nonsuch, 7559-78372-2, '96, CD) - 1)Sing Sing: J. Edger Hoover (Michael Daugherty, '92), 2)Barstow: Eight Hitchhikers' Inscriptions From A Highway Railing At Barstow Calfornia (Harry Partch, '41/arr.'94), 3)Cold War Suite From How It Happens (The Voice Of I.F. Stone) (Scott Johnson, '91-3) 4)Howl (Lee Hyla, '93) - Produced by Judith Sherman. Recorded 95/8. - David Harrington (violin), John Sherba (violin), Hank Dutt (viola), Joan Jeanrenaud (cello); Ben Johnston (voice) on 2; Allen Ginsberg (poem and reading) on 4. Robert Mapplethorpe "American Flag" ('77)を使った渋いモノクロの表紙と、 表題にもなっている「吠える "Howl"」をAllen Ginsberg自身が朗読している、 という話題性だけで買ったのだが、これが意外にも良かった。 とくに、オープニングの"Sing Sing: J. Edger Hoover"でコラージュされる F.B.I. Hoover tape−戦後のMcCarthismの悪夢の記録−が音源の音声と、それを 切り刻む緊張したストリングの響きが、ぞくぞくするほど良い。 Allen Ginsbergの"Howl"も緊張感高いけど、この作品の中ではこんなものか。 この作品では、カルテットによるストリングスの演奏と同じくらい、テキストや 詩の朗読やコラージュされる音声が重要な役割を担っている。かといって、 演奏が朗読のB.G.M.というほど引いているわけではない。まさにこの二者が 衝突している。それが生み出す緊張感がとても良い。お勧め。 Kronos Quartetといえば、'80年代半ばにJimi Hendrix "Purple Haze"の演奏で 話題を集めたSan Franciscoの弦楽四重奏団。John Zorn作曲Reck (Friction)作詞の 曲を太田裕美の朗読と演奏した奇妙な"Forbidden Fruit"や、Pat Methenyと競演 したSteve Reich "Different Trains"などは印象に残っている。が、それほど ちゃんと聴いてきたわけではないが。Kronos Quartetは去年末に Kronos Quartet "Released 1985-1995" (Nonsuch, 7559-79394-2, '95, 2CD) という概観するようなCD 2枚組が出ている。新録だが"Purple Haze"も収録されており、 これから聴こうという人には手軽な編集盤かもしれない。2枚目がunreleasedの音源 なのだが、それがScott JohnsonやMichael Daughertyの作品を取り上げており、 ある意味でこの"Howl, U.S.A."の先駆けとも言える内容になっていた、ということに 気付いた。ちょっとした方向の変化があるのかな、と思ってしまった。 96/9/22 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕