drum'n'bassものとなると、少々評価が甘いような気がするTFJです。決め手に欠けると 思って紹介する機会を逸していたこのバンドの新シングル。 Tortoise "Galapagos (Version One)" (Thrill Jocky / City Slang, SHELL003, '96, 12"33rpm) - A)Galapagos (Version One) B)Reference Resistance Gate - Original version written & performed by Tortoise. A) remixed by Spring Heel Jack. B) remixed by Jim O'Rourke versus Bedouin Ascent. Chicago出身のout rockバンドTortoiseのremixシングル連作の最新作第三弾は Spring Heel Jackによるdrum'n'bassだ。 Everything But The Girl "Walking Wounded"で名を馳せたSpring Heel Jackだが、 Spring Heel Jack "There Are Strings" (Rough Trade, R353-2, '95, CD)を聴く 限りでは、確かにダンスフロア志向を強く感じる一方単調さは否めないMetalheadzや Moving Shadowなどのレーベルのdrum'n'bassとは毛色が違うとは思うが、かといって、 SquarepusherやPlugほどふっきれていない、そんな中途半端な凡庸さがあると思う。 が、このTortoiseとSpring Heel Jackとの対決は、異種格闘戦にしては良くできて いると思う。ドラムのパターンもそこそこ凝っているし、ピアノの冷たい感じと、 ブーブーいうベースの違和感が良い。甘くなりそうなギターの主旋律も、この音の 中では生きている。ちょっと音が厚すぎるかな、とは思うが。 Jim O'Rourke (Gastr Del Sol)によるB面は、壊れきったdrum'n'bassといった感じ。 うねるように大小する音や、ほとんど断片的なdrum'n'bass的な打ち込みが、 コラージュされている。この荒涼感がいい。 Tortoiseの一連のremixシングルの中では最も出来のいい一枚だろう。 さて、このシングルの前にでていたのは、この2枚。ついでに、軽く紹介。 Tortoise "Djed" (Thrill Jocky / City Slang, SHELL001, '96, 12"33rpm) - A)Djed (Bruise Blood Mix) B)Djed (Remix) - Original version written & performed by Tortoise. A) mixed by U.N.K.L.E. B) remixed by John McEntire. 第一弾はMo'WaxのU.N.K.L.E.によるabstruct hip-hopなremix。重く淡々として、 掴みにかける。遅いながらも凝ったドラムパターンやたまに入るスクラッチ音は 気にいっているが。B面のJohn McEntire自身によるremixの、ちょっと壊れた electronic pop風のリズミカルさの方が、気に入っている。 Tortoise "Music For Work Groups" (Thrill Jocky / City Slang, SHELL002, '96, 12"33rpm) - A)Bubble Economy B)Learning Curve - Original version written & performed by Tortoise. Remixed by Oval (Markus Popp). Markus Popp (Oval)によるelectronicaなremix。予想通り、Tortoiseの残骸を留め ないほど脱音楽電子音響化している。これではOvalを聴いているのと同じような ものなので、ある程度Tortoise色を残した形で対決できなかったものだろうか。 さて、この一連のremixの音源となっているのが、今年の頭に出たこのアルバムだ。 Tortoise "Millions Now Living Will Never Die" (Thrill Jockey, THRILL025, '96, CD) - 1)Djed 2)Glass Museum 3)A Survey 4)The Taut And Tame 5)Dear Grandma And Grandpa 6)Along The Banks Of Rivers - Recorded and Mixed by John McEntire between 95/6-9 - Dan Bitney, John Herndon, Douglas McCombs, John McEntire, David Pajo Stereolabの制作で知られるJohn McIntireの在籍するChicagoを拠点にする インストゥルメンタルのロックバンド。英"Wire"誌の表現を使えばout rock。 重めのベースの使い方や電子音のコラージュの仕方からして、Love Tractorや Pell Mellといった、USインディのインスゥルメンタル・ロックのある種の伝統に 連なる音である。そこからの一歩を見出せないのが、決めてに欠ける一因か。 むしろ、最近になってUSインディを聴くようになってTortoiseを気に入った人に、 Love Tractor "Love Tractor" (DB Recs, DB60, '91, CD) (Krafrwerk "Neon Lights"の超絶ギターポップカヴァー所収。これは一聴に値するだろう。)や、 Pell Mell "Rhyming Guitars" (SST, SSTCD241, '90, CD)のような80年代の (90年代にCD化された) 作品を聴いて欲しい。 96/10/13 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕