drum'n'bassものとなると少々評価が甘いような気がするTFJです(その5)。 Goldie率いるMetalheadzはメジャーFFRR / Londonの配給を受け、drum'n'bass 界隈で最も成功したレーベルだ。また、ここ出身のAlex Reeceは4th & B'wayと 契約するなど、メジャー展開が最も進んでいる。しかし、"Inner City Life"を 含むGoldie "Timeless" (Metalheadz, 828 614-2, '95, 2CDs)にしても、 "Pulp Fiction"を含むAlex Reece "So Far" (4th & B'way, BRCD621, '96, CD) にしても、メジャーということに対する偏見を差し引いても、単調さが目立ち 聴いていておよそ面白いとは思えなかった。 むしろ、drum'n'bassとは違う流れから出てきたSquarepusher (Tom Jenkinson) やPlug (Luke Vibert a.k.a. Wagon Christ) の作る異端なdrum'n'bassに、 僕はdrum'n'bassの未来を見たように思った。 PhotekことRupert Parkesは、やはりMetalheadz界隈から出てきたdrum'n'bass のアーティスト。メジャーVirginと契約したこともあるが、英"The Wire"誌 95年6月号のjungle特集記事でAlex Reeceと並べて紹介されていたこともあり、 彼と同様jazz風など気分ばかりの単調なdrum'n'bassだろう、と敬遠していた。 が、Everything But The Girl "Single" (Virgin, VSCDT1600, '96, CDS) で drum'n'bass流儀のremixを手掛けたこともあり、いい機会かと、これと一緒に、 Photek "The Hidden Camera" (Science / Virgin, QEDCD1, '96, CDS) - 1)KJZ 2)The Hedden Camera 3)The Hidden Camera (Static Mix) 4)Hybrid を聴いてみた。PhotekのVirgin移籍第一弾。編集盤を除けば唯一のCDによる リリース。アナログだと12" 2枚組だが、4曲で25分余りのCDSだ。 これが意外に良い。ドラム打ち込みパターンは高速ではないのだが、間の取り 方が絶妙で単調さを排している。高速でなく、音数も少な目なこともあり、 techno、それもWarpのArtificial Intelligence近辺のtechnoにも近い感もある。 特に太いベースが飛び回る"The Hidden Camera (Static Mix)"がかっこいい。 "The Hidden Camera"が気に入ったので、彼自身のレーベルPhotekから出ている 12"の中から一番最後のリリースのものを聴いてみた。 Photek "U.F.O. / Rings Around Saturn" (Photek, PTK6, '96, 12"45rpm) - A)U.F.O. B)Rings Around Saturn "U.F.O."は"The Hidden Camera"と同じような構成の曲だが、"Rings Around Saturn"は高速のシャカシャカした打ち込みの分だけ、普通のdrum'n'bass風に 近く聴こえる。 この2枚を聴く限り、速度などの点で芸風は違うが、打ち込みの複雑さはなかなか SquarepusherやPlugに負けていないと思う。むしろ、Everything But The Girl "Single"のremixでもこの位凝っても面白かったのではないかと思う。惜しい。 Photek "The Hidden Chamera"をリリースしたScienceはVirgin傘下の新しい レーベル。Photekと同郷St. Albans出身で、やはりMetalheadz界隈から出てきた 2人組drum'n'bassデュオSource Direct (Jim Baker & Phil Athlet (sp?)) も、 このScienceと契約している。Source Direct "The Silent Witness"1曲を 聴いた限り、Photekとも似た、ちょっと実験的なdrum'n'bassだ。そういう色の レーベルになるのだろうか。 96/11/2 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕