drum'n'bassものとなると少々評価が甘いような気がするTFJです(番外)。 いわゆるjazz界隈の人の関係したdrum'n'bassといえば、Steve Williamsonが 参加したGoldie "Adrift" ("Timeless" (Metalheadz, 828 614-2, '95, 2CDs) 所収) や、4 Heroがremixを手掛けたCourtney Pine "I've Known Rivers" (Talkin' Loud, TLCD2, '96, CDS) といったものが今年頭の頃の時点であった。 しかし、それらは良い出来とは、僕は思わなかった。 が、流行ものの好きそうな、Bill LaswellやJohn Zornの界隈の人たちが、 drum'n'bassに手を染めるのも時間の問題だろう、とも同時に思っていた。 予想通りに出てきた。しょうもないな、どうせ際物だろう、と思いつつも、 つい聴いてしまう自分の性も情けないが。 Derek Bailey "Guitar, Drum'n'Bass" (Avant, AVAN060, '96, CD) - 1)N/JZ/BM (Re-mix) 2)Re-Re-Re (Up-mix) 3)DNJBB (Cake-mix) 4)Concrete (Cement-mix) 5)Ninj (De-mix) 6)Pie (Amatosis-mix) - Derek Bailey (g), DJ Ninj (drum programming) - Exective Producer: John Zorn / Disk Union John ZornのレーベルAvantからのdrum'n'bass作品は、なんとDerek Bailey。 というより、Derek Baileyの異種格闘戦シリーズdrum'n'bass編という感じか。 対戦相手はBirminghamのdrum'n'bass DJのDJ Ninj。 DJ Ninjのdrum'n'bassは典型的なもの (Hardstepスタイル?) で、むしろ少々 単調で平凡。しかし、そんなのお構いなく、Derek Baileyはギーギーギュン ギュンとギターをかきむしり続ける。そのノイズ的なギターの音色と、チャカ ポコ高速かつ単調に鳴り続ける打ち込みの組み合わせが笑える。結果として、 奇怪なdrum'n'bass作品には仕上がっている。Derek Baileyということで、 変に有機的な掛け合いといった類のことは期待していなかったこともあるが。 ビデオDerek Bailey & Will Gaines "Will" (Incus, VD01, '96, VHS) で見た Derek Baileyの微笑みが、ここでも目に浮かぶようだ。 ただ、Derek Baileyに対戦させるのであれば、もっと異端なdrum'n'bassを するアーティストを選んで欲しかったような気がする。そう、Derek Bailey には、Tom Jenkinson a.k.a. Squarepusherの、超高速複雑怪奇な打ち込み+ Jaco Pastoriusばりの生ベースと、是非とも対決して欲しいものだ。 英"The Wire"誌あたりが企画したりしないですかね。 これを聴きながら、DJ Ninjの方が役不足と思いつつしばらくしたら、今度は これが出た。 Bill Laswell "Oscillations" (Sub Rosa, SR109, '96, CD) - 1(Digitaria 2)Fuktura 3)Dislocation 4)Extinguisher 5)Third Stage Navigator 6)Wird - Bill Laswell, DJ Ninj, Transonic - Produced by Robert Musso Bill Laswellの対戦相手もDJ Ninj。Derek Baileyとの対戦もいまいちだった ので、少々ためらわれた。Derek Baileyにはまだ破壊的なギターという個性が あるが、Bill Laswellは自身の個性があるというよりむしろ裏方仕掛人的な 所が強いし。 はたして、DJ Ninjも"Guitar, Drum'n'Bass"の時より凝ったことをしているし、 ちょっと暗めで落ち着いたdrum'n'bassだと思うが、やはり平凡だ。このような 正攻法では、もっと面白いdrum'n'bassはたくさんあると思う。 過激な折衷主義者Bill Laswellには、やはり、Pharoah Sandersのsaxの咆哮や、 Very Very Circusのラッパ隊や、Master Musicians of JajoukaのMoroccan トランス音楽や、Carolinhos BrownのBahiaビートと、drum'n'bassを対決させて 欲しいと思う。いや、かつてThe OrbらにAxiom音源をambient techno化させた Axiom Ambient "Lost In The Translation" (Axiom, 314 524 053-2, '94, 2CDs) を作ったように、Axiom Drum'n'Bassのような企画をやってくれるだろう、と 僕は期待している。この"Oscillations"は、そこに至るほどにはBill Laswellが まだ drum'n'bassを消化しきれておらず、その準備にとりあえずやってみたと いう作品なのかもしれない。 あと、この2枚に共通して言えることなのだが、他のdrum'n'bassのレコードと 続けて聴くと妙に音のキレが悪いのが気になる。打ち込みまわりの音処理に 問題あるのではないか。 96/11/2 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕