月に一枚くらいは現代音楽を紹介しよう、と思いつつ、なかなかできないTFJです。 1年くらい前に一度いきつけのジャズ喫茶でMark Rappaportに聴かせてもらった ことがあるのだが、それっきりだったこの作品、久々にちゃんと聴いてみたら、 良いので紹介したい。 Tomoko Mukaiyama "Women Composers" (BVHaast, CD9406, '94, CD) - 1)Hoerfenster Fuer Franz Lizst (Adriana Hoelszky, '86-7) 2)Inner Piece (Vanessa Lann, '94) 3)Piano Sonata VI (Galina Ustvolskaya, '88) 4)Piano Sonata (Sofia Gubaidulina, '65) 5)Double Fiesta (Meredith Monk, '88) - Recorded 94/8/15-17 - Tomoko Mukaiyama (piano) Willem Breukerらのリリースで知られるHollandのレーベルBVHaastからの、 日本人女性ピアノ奏者 向井山 朋子 の作品。クレジットではピアノ・ソロ なのだが、歌声も入るものもある。ドラム/パーカッションらしき音がする ものもあるのだが、これも自分で叩いているようだ。 ピアノのタッチはやはりクラッシックぽくて − 彼女は武蔵野音大出身らしい − 巧いが、それよりも、BVHaastの色なのかもしれないし、選曲に依る所が 大きいだろうが、現代音楽の妙な辛気臭さをあまり感じさせないノリの良さを 見せる所が僕は好きだ。それにタッチの強さもいい。フリー・ジャズ界隈の ピアノ・ソロを楽しんでいる人なら、きっと楽しめる作品だと思う。 "Women Composers"ということで、現代音楽の女性作曲家の作品集なのだが、 いかにもな「女性らしさ」を感じさせられるような曲は、当然といえば、 そうだが、無い。ジャケットの彼女自身のヌード写真といい、コンセプト的に フェミニスティックな戦略が臭うので、そういうのが苦手な人には辛いかも しれないが。 向井山 朋子はAmsterdam, Hollandを活動しているようだが、今年の9月末から 10月頭頃に、ドイツ文化センターやTower Records渋谷店でコンサートしたよう。 聴いてみたかった。 最後に、このCDのライナーノーツの言葉を。 「女性の作曲家を女性として特に記す必要はあるのか? もちろん − 作曲の 歴史を一覧すれば充分だろう。前世紀において、Fanny Mendelssohnは兄の Felixの名でしか彼女の歌曲を出版することができなかった。Clara Schumann は彼女の作品の演奏は、家での私的なものに制限された。Alma Mahlerは、 夫Gustavによって全く作曲を禁じられた。 今でも物事はたいして良くなっていない。今でさえ、Nadia & Lili Boulangerが 全世代 (ほとんど男性なのだが) における例としてみなされており、他に挙げる べき人はたいしていない。 女性の作曲家のことを耳にするようになったのは、ここ最近20年間くらいである。 特にGalina UstavolskayaとSofia Gubaidulina。二人とも鉄のカーテンの陰で 孤立した状態で作品を作り続けてきた。」 (訳: 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕) -- Paul Janssen (1994) [1] Paul Janssen: Liner Notes for Tomoko Mukaiyama "Women Composers". 96/12/15 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕