Howard Bernstein a.k.a. Howie B., Olde Scottish。Bjork "Post" (Mother, '95)の "I Miss You"やEverything But The Girl "Walking Wounded" (ebtg / Virgin, '96) の"Flipside"で制作参加するなど、trip hop界隈では比較的メジャー展開をしている。 しかし、今年の頭にメジャーから出た、自身の名義のアルバム Howie B. "Music For Babies" (Polydor, 529464-2, '96, CD) は、考え過ぎではないか、と思われる作品だった。Trickyにしてもそう思うのだが、 内面性とか精神性といった「いかがわしい」ものに足をとられて、ビートの持つ 批評性を失ってしまった感があるのだ。これは、trip hopの袋小路なのかもしれない。 こんなこともあり、彼のレーベルPussy Footをちゃんと追いかけようという気には なれなかったのだが、編集盤CDが出たので、聴いてみた。 Various Artists "Pussy Galore" (Possy Foot, PUSSYCDLP007, '96, CD) スパイ映画"007"をモチーフにした、架空の映画音楽といった趣。Howie B "Music For Babies"にもあった一種のサウンドトラック症候群[1]とも言える 傾向には問題を感じるのだが。これは、"Headz"などの編集盤におけるB.G.M.性の 問題と共通するものだとも思う。 「ウォークマンが登場した時、急に僕達の生活にテーマ音楽がついた。"あらゆる ものごとにサウンドトラックがあるのに、どうして生活にも無いのか?" と、 一種のメディア世界に僕たちは生きているという事実へと、それは人々の意識を 向けたと、僕は思う。サウンドトラックは僕らの存在の一部になってしまった。」 -- James Bradall a.k.a. Funci Portini (1996) [2] Howie B.にも、このような世界に生きるものの音楽、とでもいえる物を感じる。 それをここでとりあえず問題にしないとしても、ジャケットの絵には見合って いるが、いかがわしい出来だ。 一曲目のSpacer "Contrazoom"は、映画音楽的というか新古典主義的なオーケストラ 曲のネタに使ったdrum'n'bass曲なのだが、さらにソウルフルな女性ヴォーカルが 入るという、節操無いが実験的ではない深みの無い所が楽しい折衷主義的な作品。 8曲目のHowie B. "My Speed Boat Is Faster Than Yours"は、Latin precussionの 音も狂騒的で面白い。こういう下世話なノリは楽しい。 玉石混交、つまらない曲もあるが、こういう曲も収録されていたので、よしと しておこう。 参考文献: [1] Rob Young: The Soundtrack Syndrome, The Wire, Issue 153, pp.27-30, 1996. [2] Peter Shapiro & Rachael Philipps: Something For The Blunted, The Wire, Issue 147, pp.19-22, 1996. 96/12/15 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕