はじめてback stage passなるものを手にしたTFJです。というわけで、16日の晩に Mute BeatというかKodama & Gotaの渋谷Club Quattroでのライヴを観てきた。 実は某MM誌の取材なので、ライヴ・レヴューを書かねばならない。その下書きと いうか、文字数制限無しヴァージョンを。 _ _ _ Kodama & Gota 渋谷 Club Quattro 96/12/16, 20:00-22:00 懐かしい気分になった。それは、かつてのMute Beatを思い出したからではなく、 小玉の吹くトランペットが奏でる感傷的で甘い旋律のせいでもない。 最近はreggaeよりも、むしろVirgin Ambientの"Macro Dub Infection"編集盤などで 取り上げられるようなreggaeの文脈から大きく外れるdub − と言う必要があるのか とも思うが − を聴くことが多い。それらの音はリズムと音処理に対する志向が強く、 ときにメロディに対する欠乏感を感じることもあった。だから、確かに Kodama & Gota "Something" (Sony, SRCS8163, '96, CD) を聴いたときに、久々に聴けるメロディの乗ったdub / reggaeを聴いてほっとした。 その一方で、London録音なのに、たまにJah Shakaっぽいと思うことがある程度で、 表面的にはそういった新しいdubの動きをあまり感じさせないことも、奇妙な気がした。 ドロドロしたどrootsというより、Joe Gibbs / Errol Thompsonのちょっとポップな roots / dub / lovers rockから80年前後のBritish reggaeの流れに連なる、 メロディ志向のreggae − Mute Beat時代からの色でもあるが − を、今に蘇らせ ようとでもいうのか。 あまり「新しい何かをやってやろう」的の企画ではないのだろうか、と、思いつつ 聴きに行った、かつてのMute Beatのメンバーを集めての新曲からなるライヴは、 おせじにもノレたものではなかった。小玉の吹くラッパはよく鳴っていたが、 客に聴き込ませはするものの突き動かすようなものには欠けていた。客もそれほど ノっていなかった。が、アンコールに入り、Mute Beat時代の曲をやったとたん、 とてもノリが良くなったのだ。会場が盛り上がったのと演奏がノッたのと、どちらが 先かよくわからなかったが。結局、アンコールはもう一回、やっと熱くなったを 落ち着かせるかのような演奏で終わった。 いったいこれは、何だったのだろう。このメンバーでライヴをやるのは久しぶりと いうことで、新曲はライヴ慣れしていなかっただけかもしれない。MCで小玉が繰り 返し言っていたように、再会と再演を強調する懐古的な面が、音楽や聴衆のノリに 反映されただけかもしれない。しかし、それは、アルバム"Something"から受ける 聴き心地はいいけれども熱くはならない感覚にも繋がるように思う。 もし、このままツアーを続ければ、新曲のノリももっと良くなるかもしれないし、 その勢いで新作を作ったとしたら、もっと生き生きとしたものになったのかも しれない。しかし、これでは、まだまだ懐古的な企画の域を出ていない、と思って しまった。 _ _ _ ライヴ終了後、Club Quattroの箱を使っての打ち上げパーティがあった。僕も報道 関係者ということで残った。もちろん、小玉や屋敷も出てきていた。いかにも業界 関係者という人が多かっただけでなく、その場にノリきれていないことに自分でも 気付いているだけに、妙に気後れして、特に話する気になれなかった。某MM誌の 編集者がいたら話をしたかったが、それらしき顔はなかった。ということで、中座 してしまった。 96/12/22 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕