VirginレーベルのAmbient編集盤シリーズやVarious Artists "Headz II" (Mo'Wax, '96)、もしく"The Wire"誌やLo Recordingsが関係したExtreme Possibilities Live And In The Mixに見られるある種のジャンル横断的な編集や企画、これはイギリス 的なものなのだろうか。もちろん、BelgiumにはSSR / Crammed Discsの"Freezone" シリーズがある。Frankfurt, Germanyからの、レーベル名からして出るべくして 出たGilles Deleuze追悼企画盤、Various Artists "In Memoriam Gilles Deleuze" (Mille Plateau, MP22, '96, 2CD's) も、technoからout rockまでという顔ぶれと いう点で、同様の編集盤だ。これまで視野にいれても、ある意味でヨーロッパ的な 現象なのかもしれない。と、アメリカでの対応物は何だろう、と気にしていたところ、 Bill LaswellのAxiomレーベルから、こんな編集盤が出た。 Axiom Dub "Mysteries Of Creation" (Axiom, 524 313-2, '96, 2CD's) - Sly & Robbie, Sub Dub, The Orb, We, Material, Wordsound I-Powa, Mad Professor, Automaton, Dub Syndicate, Jah Wobble, Techno Animal, New Kingdom, Scarab, DJ Spooky, Ninj, Bill Laswell - Conceived and Constructed by Bill Laswell Kevin Martin編集のVirgin / Ambientでの"Macro Dub Infection"シリーズの、 Bill Laswell / Axiomからの回答、といえば格好いいが、顔ぶれも"Macro Dub Infection"とたいして変わらず、意外性に欠ける。悪く言えば二番煎じだ。 "Macro Dub Infection"は既発表曲の編集なのに対し、Axiom Dubはこのために 制作した音源中心なので、Bill Laswellらしい狙い過ぎともいえる雰囲気もある のだけれども。 で、これを聴いていて、Axiom Ambient "Lost In The Translation" (Axiom, 314-524 053-2, '94, 2CD's)を思い出した。これは、Axiomのそれまでの音源を、 Terre Thaenlitz, The Orb, Tetsu Inoueによってambient techno化した作品 だったのだが、今回のAxiom Dubの先駆けともいえるものだった。"Macro Dub Infection"にしても"Freezone"にしてもambientをルーツに持つことに、まさに 符合するからだ。abstruct hip hopのAxiomからの回答ともいえるVarious Artists "Altered Beats" (Axiom, 162-531 104-2, '96, CD)も、まさにこの流れに乗る ものだ。 ここで、ヨーロッパの一連の編集企画盤に無くAxiomならではの企画盤、という ものを考えるときに、注目すべきは、これかもしれない。 Axiom Funk "Funkcronomicon" (Axiom, 314-524 007-2, '95, 2CD's) - Produced by Bill Laswell Bernie Worrell, Bootsy Collins, George Clintonといった、Perliament / Funkadelicの人脈のミュージシャンを中心に作られたfunkの企画盤。故Eddie Hazelのギター演奏も収録され、P-Funk好きにはたまらない編集盤だ。 この手の企画編集盤のルーツに、Brian Eno / David Byrne "My Life In The Bush Of Ghosts" (EG, '81)があるのは、確かだと思うし、そこではfunkのビートが 重要な役割を演じていた。そして、このアルバムに先立って出たTalking Heads "Remain In Light" (Sire, '80)には参加していないものの、そのときのツアー ではBernie WorrelらP-Funkのメンバーも参加していたのだった。 ヨーロッパ発の企画編集盤では、このfunkのビートがtechno / houseのビートに 置き換わっている。それがどういうことなのか興味もあるが、その一方でfunk的な 要素にもっと注目しても良いようにも思っている。 John Corbett "Extended Play" (Duke Univ. Press, ISBN0-8223-1473-8, '94)は、 "Brothers From Another Planet: The Space Madness of Lee "Scratch" Perry, Sun Ra, and George Clinton"という論文で幕をあける。彼らが好んで用いる狂気、 宇宙といったものから、アフリカン・アメリカンの疎外された社会状況に対する 戦略を読み解く、興味深いものなのだが。reggae / dub、(electric) jazzそして funk、これが鍵だ。 Kevin Martinは、VirginのAmbientシリーズで、"Macro Dub Infection"を、続いて "Jazz Satellites"を、編集した。ここで抜けているのはfunkだろう。そして、 "Axiom Funk"は、その抜けている部分を補うのに充分な企画盤だと、僕は思う。 96/12/17 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕