Various Artists "Avantgardism - Drum'n'Bass" (Law & Auder / Blue Angel / Rising High, LA-ANGE1CD, '96, 2CD's) - Doppler, Force Of Angels, Friends Lovers & Family, Moondogg, Plug, Fluid, Bedouin Ascent, Vert, Milkyboy, Pearl, Seven Selves, A.R.K., Oyster, Environmental Science, T-Power, Underground Beat Movement, DJ Hustler, Wagon Christ vs Aphex Twin, Watchman, Martin & Lisa, Tom Jenkinson もともと軍事用語で前衛を意味するavant garde。それが市民革命を通して政治用語 となり、さらに最初はメタファーとして、20世紀初頭にはまさに連動するものとして、 芸術に用いられるようになったのだが。TortoiseにStereolab、Beat Meat Manifestに Lambと、異種格闘戦を続けるLuke Vibert (a.k.a. Plug, Wagon Christ) は、その 意味でdrum'n'bassの前衛 (avant-garde) なのかもしれない。 そのPlugのリリースをしているRising High傘下のBlue Angelから、「前衛主義」と 名付けられたCD 2枚にわたる編集盤が出ている。Plugはもちろん、Bedouin Ascentや Tom Jenkinson (a.k.a. Squarepusher) やAlphex Twinも参加しており、Metalheadzや Moving Shadowの界隈の主流drum'n'bassとは異なる、実験的なdrum'n'bassを聴く ことができる。高速で複雑な打ち込みを基調とした音が好きな人にはお薦めだろう。 ただ、例えば、Plug "Drum'n'Bass For Papa" (Blue Angles, '96)やSquarepusher "Feed Me Weird Things" (Rephlex, '96)ほど楽しめるかというとそれほどでもない。 彼らのフォロワーともいえる音がたくさん詰まっているからいい作品というわけでは ないのだ。ホーンの音をフィーチャーしたものはそこそこ興味深いが、さらに進んで 聴きたくなるようなユニットをここに見出せなかったのは残念だ。こういう所からは、 もう面白いものは出てこないのかもしれない。亜流を聴いても仕方ない、というだけ かもしれないが。 この編集盤に収録されている、Tom Jekinson "Happy Little Wilberforce"は、 もともとLondonのAmbient SohoのレーベルWorm Interfaceから出ていた音源だ。 それが収録されていたのはこれ。 Various Artists "Alt Frequencies" (Worm Interface, WI007, '96, CD) - Dunderhead, Tom Jenkinson, Freeform, Gescom, David Kristian, Coma, Replicant, Further, Plasma Lamp そのWorm Interfaceからでた編集盤は、Tom Jenkinsonばりのdrum'n'bassを期待 したのだが、一曲目Dunderhead "Doditsu"は、まさに独々逸をネタにしたdowntempo breakbeatsで脱力。Tom Jenkinsonの2曲 "Vogon & I" は、やはりdowntempo break- beatsといった趣で意外だった。"Happy Little Wilberforce"も、もっとベースが 効いていたらと思う。奇妙なdrum'n'bassからdowntempo breakbeatといった音が 詰まっているが、いまいち決め手に欠く。Squarepusherのような期待で聴くと はずれだろう。 Dunderhead "Black Beading" (Worm Interface, WI008, '96, 12"33rpm) その編集盤で脱力させてくれたA2 "Doditsu"は、ダブワイズな処理になっていて、 ますますもってとても面白い。他は奇妙で地味なdowntempo breakbeatsだったが。 A1やB2のjazz風のpianoの音は好きだが。雰囲気で終わっている感もある。この DunderheadはTom Jenkinsonの別名義とも聞くが、未確認だ。 さて、Tom Jenkinsonのレーベルからも編集盤がでている。 Spymania Allstars "Avit" (Spymania, SPY004, '96, LP) - Alvis Parsley, Si Begg, Wafia, Tightpac, Paddington Breaks, The Turner Modijedson やはり、Squarepusher流儀の超高速drum'n'bassが詰まっているのだが、ここまで 徹底されると潔い仕上がりで楽しめた。しかし、A面の最後にシークレット・ トラックのように入っている調子っぱずれたdowntempoな曲はいったいなんだ? B面ラストもdrum'n'bassではないが、punk的な2ビートと"go!"という掛け声が なんとも変。gabbaではないが。 しかし、ここで取り上げた3題の編集盤 ("Avantgardism - Drum'n'Bass"、"Alt Frequencies"、"Avit"、いずれも、ダンスフロアを想定していないような気がする。 あと、これらを続けて聞いていて、どうも打ち込みやbreakbeatsに凝り過ぎて、 ベースが弱い。それが、グルーブ感を損ない、打ち込みに対する批評性を削いで いるように感じる。 96/12/22 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕