同郷 Cornwall 出身でRichard D. Jamesが見出したLuke Vibert (a.k.a. Wagon Christ, Plug) や、やはりRichard D. JamesのレーベルRephlexからデビュー・ アルバム Squarepusher "Feed Me Weird Things" (Rephlex, CAT037CD, '96, CD) を出したTom Jenkinson (a.k.a. Squarepusher) など、Richard D. James (a.k.a. Aphex Twin) 界隈から前衛drum'n'bassな刺激的な音が出てきていることもあり、 彼が次にどのような音を出すのか楽しみだった。 その一方で、Aphex Twin "... I Care Because You Do" (Warp, WARPCD30, '95, CD) ではなく、PlugのRising Highからの一連のシングルやBedouin Ascent "Music For Particles" (Rising High, RSNCD37, '95, CD) こそ、'95年に聴いておくべきだった、 と思っているだけに、Aphex Twinには期待するほどではないか、とも思っていた。 Aphex Twin "Girl / Boy E.P." (Warp, WAP78CD, '96, CDS) Aphex Twin "Richard D. James Album" (Warp, WARPCD43, '96, CD) 先行してシングルカットされた"Girl / Boy"が、クラッシック的なストリングスの メロディにSquarepusherばりの高速複雑怪奇な打ち込みをかぶせたような曲で、 それだけでも一聴に値する作品だと思う。これは、"Richard D. James Album"の オープニングにも繋がっているが。The Philipp Grass Orchestraとの共演経験も あることだし、このようなストリングスの使い方は彼の個性になっていると思う。 全体に漂うのもこのメロディ志向だ。思わず口づさんでしまうようなメロディが、 奇怪な打ち込みの割に親しみやすい作品にしていると思う。"Fingerbib"のような、 初期 ('80s初頭) のO.M.D.を思い出させる曲すらある。シングルでは"Milk Man"や "Beetle"では、実際に歌ってみせているくらいなのだが。つぶやくようにだが。 ノイジーな曲とのコントラストもよい。 "Girl / Boy E.P."でのremixは元曲のストリングスなど跡形もないので、彼の歌が どうしても聴きたい − 聴くまでもないように思うが − というのでない限り、 "Richard D. James Album"を聴くのが良いだろう。40分弱という時間の短さは 惜しいが。 Various Artists "Avantgardism - Drum'n'Bass" (Blue Angles, '96)のような 編集盤よりずっと多様な音が詰まって楽しめる作品だろう。 ジャケットの顔写真は、前作のイラスト以上に恐いが。 Mike & Rich "MR Games" (Rephlex, CAT027CD, '96, CD) さて、Aphex Twinの新作に先立って出たMike Paradinas (a.k.a. Mu-Ziq)との プロジェクトMike & Richは、エレクトロ的なファンキーさもある遊び心ある作品。 ジャケットもぴったり。Richard D. Jamesの笑顔も無気味だが。 ただ、ちょっと決めてに欠くように思う。しょせん、technoの文脈での遊び心なの かもしれない。 96/12/22 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕