落穂拾いというわけでないが、紹介しそびれていた、William Parker 界隈の作品を まとめて。 William Parker は、僕が一番気にいっているベース奏者だ。手数が多く音が太い だけでなくゴーゴーいう弓弾きもかっこよい。特に、手数と多さと音の狂暴さでは 世界屈指の Cecil Taylor (p) と Tony Oxley (ds) とのスーパー・ピアノ・トリオ The Feel Trio は、90年代のピアノ・トリオの中でも最強の類だろう。 その William Parker を中心に、Matthew Shipp (p)、David S. Ware (ts) などが、 Cecil Taylor school − もはや Cecil Taylor の名前を出す必要はないのだろうが − とでもいう作品をここ2〜3年よく発表してきている。ミュージシャンの顔ぶれと しては、僕は注目している限りでは、 b: William Parker ds: Whit Dickey, Susie Ibarra, Jackson Krall p: Matthew Shipp, Cooper Moore g: Joe Morris ts: David S. Ware as: Rob Brown vln: Mat Maneri といったところで、これが適宜3〜4人で組んでいるといった具合だ。最も多いのが、 William Parker、Whit Dickey (最近 Susie Ibarra に入れ代った)、Matthew Shipp のいわゆる Matthew Shipp Trio のリズム隊のフロントに一人据えたカルテットで、 − といっても、そんな旧式な音の分業体制にはなっていないが、 − 例えば、 フロントに David S. Ware がくると David S. Ware Quartet となる。 どういう編成でも、ハズレがあまりないので安心して聴かれる一方、だいたい同じ ような展開になるのでちょっとワンパターンかなという気もする。Cecil Taylor 的 構成でロフトの熱狂を作り出すような演奏が楽しめる作品には変わりないが。単に、 僕の好みだという話もあるが。 William Parker In Order To Survive "Compassion Seizes Bed-Stuy" (Homestead, HMS231-2, '96, CD) - Recorded on 95/12/18 - Rob Brown (as), Susie Ibarra (ds), Cooper Moore (p), William Parker (b) William Parker "In Order To Survive" (Soul Note, 120159-2, '95, CD) の続編は、 ラッパ2本を除いたワンホーン・カルテット編成。前作では、そのラッパ2本が印象的 だっただけに、ちょっと地味になったかもしれないが。9曲入りということからも わかるよう、小回りの効いた速い展開がかっこいい。Rob Brown のフレーズが マイナーな感じになるときが好きだ。 このリリースは David S. Ware Quartet も2作リリースしているNYの Homestead から。 もともと脱punk的なout rockを中心にリリースしてきたレーベルだが、最近はこの 界隈に力をいれているよう。これからも期待したい。その Homestead から、もう1作。 Joe Morris Ensemble "Elsewhere" (Homestead, HMS233-2, '96, CD) - Recorded on 96/2/26. - Joe Morris (g), Matthew Shipp (p), William Parker (b), Whit Dickey (ds) Joe Morris + Matthew Shipp Trio という編成での作品。Joe Morris はエフェクトや フリーキーな音は使わない人で、軽い音色で速弾きで複雑な水平フレーズをどんどん 繰り出してくる。というわけで、David S. Ware (ts) や Mat Maneri (vln) が フロントのときより軽快だ。Matthew Shipp Trio の演奏もあいかわらず。ただ、 演奏ではなく録音がちょっとオフめなのか、迫力に欠く気もする。 Joe Morris がらみの作品といえば、ちょっと古くなるが、 Joe Morris - Rob Brown Quartet "Illuminate" (Leo Records Laboratory, LEOLABCD008, '95, CD) - Recorded on 93/11/9 - Joe Morris (g), Rob Brown (as), William Parker (b), Jackson Krall (ds) の方が格好いい。pianoの代わりに Joe Morris のgが入った In Order To Survive (もしくは、Matthew Shipp Quartet "Points" (Shilkheart, SHCD129, '90, CD)) という編成だ。リズム楽器はpianoよりguitarの方が前衛的に聴こえる(笑)、という やつかもしれないが。 William Parker は参加していないが、Joe Morris からみということで、一緒に。 Joe Maneri, Joe Morris, Mat Maneri "Three Men Walking" (ECM, ECM1597, '96, CD) - Recorded 95/10-11 - Joe Maneri (cl,as,ts,p), Joe Morris (g), Mat Maneri (vln) Joe Morris に Matthew Shipp Quartet "Critical Mass" (213CD, 213CD003, '95, CD) のフロント Mat Maneri と、その父 Joe Maneri による変則トリオ。William Parker が参加していないからというより、Steve Lake / ECM の制作のせいだろうか、 うってかわって、疎な音による淡々とした作品。Matthew Shipp もソロになると、 ときどきこういう音世界になってしまうわけで、その落差が何なのか興味はある のだが、なんだかまだよくわからない。 で、Matthew Shipp というか、William Parker に戻って。 The Matthew Shipp Duo with William Parker "Zo" (Rise Records, RR-126, '93, CD) - Matthew Shipp (p), William Parker (b) ちょっと古い作品のようだが、最近見つけて気にいっている。Matthew Shipp と William Parker の強力な対決。このドラム無しの作品を聴いて気付いたのだが、 William Parker 界隈の人脈で一番の弱点はドラム奏者ではないか? 妙に影が薄い。 Whit Dickey の代わりに入った女性 Susie Ibarra に期待したいが。どうだろうか。 Matthew Shipp のデュオ作品といえば、 Matthew Shipp Duo with Roscoe Mitchell "2-Z" (Thirsty Ear, THI21312-2, '96, CD) - Matthew Shipp (p), Roscoe Mitchell (ss,as) 激しく弾き / 吹きまくる曲と、音数少なく淡々とした曲が、展開速く入れ代わり でてくる作品。激しく吹くときも Roscoe Mitchell (Art Ensemble Of Chicago) は いい音を出していて耳障りでない。佳作だ。 以前もこのデュオの作品があったように思ってCDの山を発掘したら、Borah Bergman / Roscoe Mitchell with Thomas Beckner "First Meeting" (Knitting Factory Works, をFW175, '95, CD) が出てきた。そっか。 と、図らずしも一挙6枚紹介となってしまった。はあ。 97/1/4 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕