Various Artsts "L'Amour" (Deux Z, ZZ84117, '94, CD) が面白かったので 聴き進んでいる Deux Z 界隈のフランス前衛ジャズだが、その編集盤の中でも 最も衝撃的だった Yves Robert のリーダー作を2枚を聴いてみた。いろいろ 聴いた Deux Z の作品と比べても良い作品だった。面白いので紹介したい。 Yves Robert "Tout Court" (Deux Z, ZZ84103, '91, CD) - Recorded 91/6 - Yves Robert (tb), Philippe Deschepper (g), Claude Tchamitchian (cb), Xavier Desandre (perc) 全26曲、1曲最長5'38"、最短0'16" !!、平均で約2分。実際は、いったいどこが 曲の切れ目なのか聴いていてもよくわからない感もあるのだが、どんどん展開 していく感があって、それが良い。一瞬一曲勝負のような。 guitarの Philippe Deschepper はエフェクトやデレィを用いるので、hat Artの A.B.D. Trio での Ray Anderson (tb) vs Christy Doran (g) の対決を思いだ させるところもあるが、リズム隊が Han Bennink ほど強烈でないせいか、趣を 異にする。Deux Z 界隈のgといえば、Noel Akchote もいるが、Deschepper の 方が面白いと思う。 一曲の短さのせいか、詩集を読んでいるような感がある。tbの一音がパーっと 鳴っておしまい、とか、ほとんど俳句の世界だ。 Yves Robert "Tout De Suite..." (Deux Z, ZZ84113, '94, CD) - Yves Robert (tb), Philippe Deschepper (g), Claude Tchamitchian (cb), Alfred Spirli (ds,perc), Xavier Desandre (perc) 91年の "Tout Court" では全部自作だったが、今回は be-bop や blues の曲も やっている。56分で20曲という展開の速さはあいかわらず。 1stに比べてtbも下世話なフレーズを歌ってるし、Charlie Parker "Ornithology" では安っぽいリズム・ボックス使っていたり、と、より多彩になっている。 それが楽しい。 お人形 (バービー人形) 3体の足が覗くジャケットもかわいくてよい。Deux Z の リリースはいずれもそうなのだが、紋切型のジャズを思わせないポップな ジャケットがいい。 一連の Deux Z のリリースくらべてこの作品は録音がいいように思う。Yves Robert のリーダー作をまず買うなら、これがお薦め。 さて、Yves Robert 参加作品も追いかけているのだが、そんな中目をひいた新しい 作品がこれ。 Louis Sclavis Sextet "Les Violences De Rameau" (ECM, ECM1588, '96, CD) - Recorded on 95/9 and 96/1 - Louis Sclavis (cl,bcl,ss), Yves Robert (tb), Dominique Pifarely (vln), Francois Raulin (p,key), Bruno Chevillion (cb), Francois Lassus (ds) Yves Robert に Various Artsts "L'Amour" の Francois Corneloup Quartet での 演奏も印象的だった Francois Raulin (p) の参加で注目の Louis Sclavis の新作。 主役はやはり Sclavis のclと Pifarely のvlnだと思うし、彼等が活躍する優雅な 曲もいいのだが、パルス的にタテノリのビートを叩き出す Lassus のdsがひそかに 気にいっている。期待の Yves Robert はそれほど目立つようなことはしていない のだが、いい音出している。"La Torture D'Alphise" のような展開のめまぐるしい 曲など Robert らしい。一連の Deux Z の作品とも似た感触もあって、いい作品 だと思う。 この作品は Jean-Philippe Rameau の戯曲をモチーフに作られたもののようで、 演劇かかっているかなと感じるところもある。この界隈のフランス前衛ジャズは、 映画や演劇をモチーフにすることが多いような気がするが、芸風なのだろうか。 Yves Robert が参加した ECM のリリースといえば、Heiner Goebbels "Ou Bien Le Debarquement Desastreux" (ECM, ECM1552, '96, CD) もあるようだが、 これは未聴。聴いてみたいと思っている。他にも Deux Z や Nato といった フランス前衛ジャズのレーベルに、かなりの参加作品がある。 しかし、Deux Z と ECM を続けて聴くと、録音の良さのギャップは歴然だな。うう。 97/1/18 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕