techno / house / downbeats の比較的大手の独立系レーベルの中で、良い リリースが多いと僕が信頼を置いているレーベルに Belguim の SSR がある。 80年から活動する post-punk ならではのレーベル Crammed Discs の傘下の レーベルで、jungle / drum'n'bass のレーベル Selector と兄弟関係にある。 その他にも付随音楽のレーベル Made To Measure や world music の CramWorld というレーベルもあるが。もはやレーベル運営に専念している Marc Hollander (ex- Aksak Maboul) の A&R のセンスがいい。広い視野と Rock In Opposition をルーツに持つこだわり。 そんな SSR のノンジャンル的な編集盤 "Freezone" シリーズの'97年の第4弾が どのようになるのか、楽しみではあるが。SSR の最近のリリースのからいくつか 簡単に紹介しよう。 _ _ _ Snooze "The Man In The Shadow" (SSR, SSR172, '97, CD) Beyrouth, LB 出身で French / Guadroupean / German をルーツに持ち − 写真での見た目はスキンヘッドな French Caribbean な男性だ − Paris を 拠点に活動する Dominique `Snooze' Dalcan の Snooze 名義の初アルバム。 Paris の downtempo breakbeats シーンといえば、Daft Punk や DJ Cam がおり、 この Snooze もそういったユニットだ。Dominique Dalcan 名義で Crammed Discs から2枚のアルバムを出している。また "Freezone" の第2, 3集でも Snooze 名義で参加している。 "Tribute To Horace" という曲で Massive Attack "Hymn Of The Big Wheel" ("Blue Lines" (Wild Bunch, WBRCD1, '91, CD) 所収) から Horace Andy の 歌声をサンプリングしていることもあるのか、Paris の Massive Attack とも 言われているが。(それを気にして聴いてみたのだが。) しかし、ベースラインが reggae / dub 的に引きずるものではなく hip hop 的に跳ねるものなので、Massive Attack のような緩い感覚は無い。jazz 風の サンプリングと drum'n'bass 的なリズムの曲があるのは時代か。ジャケットの デザインにしてもそうなのだが、映像的というより映画的な音使いだ。しかし、 何か決め手に欠く音だ。 しかし、今、フランスは保守政権による移民排斥で揺れているはずだが、 移民である Dominique `Snooze' Dalcan の作品から、それに関する緊張が いまいち感じられないのも不思議だ。 _ _ _ 自身のレーベル Reiforced をベースに 4 Hero、Tek 9 名義で活動している Dego McFarlane & Mark Clair。その drum'n'bass のユニットでのアルバム 4 Hero "Parallel Universe (Selector, SEL3, '95, CD) にしても、downtempo breakbeats のユニットでのアルバム Tek 9 "It's Not What You Think It Is!?!!" (SSR, SSR161, '96, 2CD) (Reinforced でのシングル集である "Breakin' Sound Barriers" を併せた CD 2枚組でリリースされている。) にしても、Reinforced の12"シングル 100題を記念した Various Artists "About The Law" (Reinforced, RIVETCD07, '96, 2CD) にしても、正直言って退屈以上のものはそうなかった。むしろ、 Tek 9 "Is It On?" (SSR, SSR170, '96, CDS) - 1) (Dego's radio mix) 2) (Carl Craig mix) 3) (Jordan Field mix) 4) (DJ Cam mix) 5) (Endemic Void mix) 6) (Nightmare On Wax mix) 7) (Tropical Underworld mix) 8)Haven't You Heard? "It's Not What You Think It Is!?!!" からのシングルカットは、様々な remix陣を迎えて同じ曲とはいえないほど音が作り替えられており、 SSR らしい "Freezone" 的な多様さを持ったものになった。 "Is It On?" は、fusion 的なギターのサンプリングも印象な lounge がかった downtempo breakbeats 曲なのだが、その lounge 的なドラムの音を生かした まま techno 化した Carl Craig や、scratch や electro な打ち込みで abstract hip hop 感を増した DJ Cam や Nightmare On Wax もいいかな。 drum'n'bass 化した Endemic Void は平凡か。 BGM 的ではあるあまり集中して聴きたい音ではないが、lounge 的 break- beats 編集盤として、Tek 9 のアルバムよりは楽しめる。 4 Hero / Tek 9 がらみといえば、この編集盤はお薦めしたい。 Various Artists "The Deepest Shade Of Techno I + II" (SSR, SSR174, '96, 2CD) - Compiled by Dego & Mark Mac (I) and by 4 Hero & Ranx X313 (II) - Underground Resistance, John Beltran feat. Open House, A Tribe Called Dance, Octave One, Project 625, 3rd From The Sun, Eddie Flashing Fowlkes, Nu Era, Wink, Psychedelic Research Lab, Ti Ton Ton, Enhanced, Morgan Geist, A Guy Called Gerald, Art Forest, Claude Young, Dorian Gig, Never On A Sunday, Q-Moog 4 Hero による Detroit techno のコンピレーション。Reflective レーベルから 出ていた2枚の編集盤を併せて2枚組CDにしたもの。 Detroit techno や 4 Hero への興味ではなく、(おそらくスーパーマーケットの 店内を撮影した) 黄色っぽい写真をグリッド状に反復して並べた minimalism 〜 conceptual art 的なジャケット・デザインに惹かれて買ってみたのだけれど、 聴いてみたら意外に楽しめた。 Detroit techno とはいえダンスフロア志向のあまり強くない選曲がなされいる ようで、複雑めのリズムは SSR の "Freezone" シリーズとも共通の聴いていての 楽しさを持った編集盤になっている。曲の繋ぎはしていないので、曲がぶつりと 切れたりする所では、どきりとするが。 しかし、4 Hero や Tek 9 による作品や自身のレーベルの編集盤よりも、この 編集盤の方が楽しめるというのも問題あるような…。 97/3/23 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕