Tim Berne "Bloodcount Unwound" (Screwgun, SCREW U 70001, '97, 3CD) - Recorded 96/3 at Quasimodo, Berlin (Disk 1,2) and 96/4 at a German beer hall, Ann Arbor, MI (Disk 3) - Tim Berne (bariton & alto sax), Chris Speed (tenor sax, clarinet), Michael Formanek (bass), Jim Black (drums) 僕が Tim Berne の演奏を初めて聴いたのは、John Zorn "Spy vs. Spy - The Music Of Ornette Coleman" (Elektra / Nonsuch, 9 60844-2, '89, CD) で だった。この Ornette Coleman の曲を圧縮した演奏で、John Zorn と双頭で 荒々しい alto sax の演奏を聴かせてくれた Tim Berne のバンド Bloodcount の新作はライヴCD 3枚組。かつてのレーベル JMT が PolyGram に取り潰された ので、自身のレーベル Screwgun から。 クールな guitar を演奏する Marc Ducret が抜けて、完全暴走。"Spy vs. Spy" ほど時間的な圧縮がかかっていないし、展開の仕方は違うのだけれども。 Chris Speed と二人でバリバリと吹きまくっている。もちろん、bass & drums も強烈なビートを叩き出している。生々しい。 で、演奏も凄いが、録音も凄い。割れるほどにラウドに録音されている。 バリバリ。これが効果的で、さらに生々しい感触を生んでいる。 Ann Arbor, MI での録音は若干おとなしいが、Berlin のは壮絶。CD 3枚あっと いうまに聴かれる素晴らしい作品。わけわからん jazz のCDを3枚を買うくらい なら、この3枚組を買おう。お薦めだ。 パッケージ・デサインが JMT 同様 Stephen Byram ということで、凝った紙の パッケージで嬉しくもあるが、録音データを判読するのが困難なのは、まいる。 しかし、これだけが Tim Berne ではない。Tim Berne のもう一面を知ることが できる初期の作品が、ついにCD化された。 Tim Berne - Bill Frisell "... Theoretically" (Minor Music, MM8008, '86/'96, CD) - Recorded and Mixed 83/8-9 - Tim Berne (alto sax), Bill Frisell (electric and acoustic guitars) Marc Ducret と同じくクールな guitar を弾く Bill Frisell とのデュオ。 Bill Frisell の guitar が作る ECM のジャケット写真を想起させるような 音空間の中を、ブリブリという音すら繊細に聴こえる Tim Berne の alto の フレーズが浮遊する。辛気臭くなる直前の、いい緊張感のある演奏だ。 かつて、John Zorn "Spy vs Spy" が気にいって、これに参加していた Tim Berne と Joey Baron (ds) に、Hank Roberts (cello) の trio である Miniature をさらに聴いたのだが、その繊細な音に面食らったのを思い出す。 分裂しているようだけれども、細かく聴けば、"Bloodcount Unwound" でも Anthony Braxton みたいになる所があるし、"... Theoretically" でバリバリ 吹いているときもある。全体としてトーンが違うのはバンドのコンセプトや サイドメンの違いだろう。 大胆かつ繊細な演奏を聴かせてくれる Tim Berne は、今注目に値する alto sax 奏者だろう。 97/4/1 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕