Mike Paradinas おまえもか (うそ)。 Mu-Ziq "Urmur Bile Trax Volume 1 Volume 2" (Hut, PLUD3, '97, CD) - Volume 1) 1)Urmer Bile 2)Let Let 3)M5 Saabtone 4)Fine Tuning Volume 2) 5)The Hydrozone 6)1 Hip 007 7)Hornet 8)The Phonic Socks Tom `Squarepusher' Jenkinson や Luke `Plug' Vibert が drum'n'bass の 前衛を突き進み、盟友 Richard `Aphex Twin' James もそれに続いてしまった 感もある中、Mike `Mu-Ziq' Paradinas は electro な Jake Slazenger 名義で 作品を出し、独自路線を進むのかと思わせた'96年だった。 が、Mu-Ziq 名義での新作は、複雑高速ビートの前衛 drum'n'beat が中心の 作品だ。といっても、この作品は去年の夏には出来ていたのではないかと 思われる。というのは、"The Wire"誌 96年月7号に掲載された Tom Jenkinson, Mike Paradinas, Luke Vibert らをとりあげた記事[1]で言及されている Ornette Coleman の曲を使った曲がここに収録されているからだ。どうして リリースが遅れてしまったのだろう? 去年に Squarepusher "Feed Me Weird Things" (Rephlex, '96) や Plug "Drum'n'Bass For Papa" (Blue Angel, '96) と同じ頃にリリースされていたら、もっと衝撃的だったろうに。 で、やはり、この作品の聴き所は Ornette Coleman "Virgin Beauty" ("Virgin Beauty" (Portrait, '87) 所収) からのサンプリングを使った "Let Let" だろう。いや、使った、というより、"Virgin Beauty" の Mu-Ziq drum'n'bass remix というのに近いかもしれない。クレジットでも "Let Let" incorporates a sample from "Virgin Beauty" by Ornette Coleman と − それも uses でなく incorporates と − 明記されている。一聴して Ornette Coleman のものとわかるへなちょこな alto のソロで曲が始まり、 ノイジーの drum'n'bass ビートが無理矢理のように割り込む瞬間がかっこいい。 後半、alto のフレーズに drum'n'bass ビートがからむ所も悪くはないが。 Ornette Coleman はこの曲を聴いてどう思っているのだろうか? "Tone Dialing" (Harmolodic, '95) に続く Prime Time での新作では drum'n'bass のビートを 使ったりするだろうか。それとも、そんなのとは関係ない新作になるだろうか。 他の曲は、といえば、むしろ Jake Slazenger 名義の方がお似合いであろう "Fine Tuning" が中では映えるか。手数の多い "1 Hip 007" もいい。サンプルで 使われている音が耳障りで重い音が多いので、Squarepusher "Squarepusher Theme" (Rephlex, '96) の爽やかさや Aphex Twin "Boy/Girl" (Warp, '96) の 流麗さとは対極的でもあるのだが。 ちなみに、この作品はアナログでは Volume 1 と Volume 2 で別売されている。 EU盤CDはCDSのケースに入っているが70分近い収録時間でアルバム相当の量だ。 参考文献: [1] Rob Young: Breakbeat Descendants, The Wire, Issue 149, July, 1996. 97/4/6 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕