The Third Eye Foundation "Ghost" (Domino, WIGCD32, '97, CD) 去年リリースされた音響派 out rock meets drum'n'bass の名盤 "Semtex" (Domino / Series 500, SER502, '96, 12"33rpm) 所収) で期待の、 Bristol 出身 Matt Elliot a.k.a. The Third Eye Foundation の新作 アルバムが出た。 典型的な drum'n'bass のビートは使われていないものの、「drum'n'bass 以降」であることを感じさせる、音響構造を持った作品になっている。 吹き荒れるギターのフィードバックやサンプリングのノイズは、荒涼感だけ でない一種のドローン効果を持って、ゆるやか枠組みを与えるだけの リズムと、対峙する。そして、それに脱パンク期に出てきた、ダブワイズ でノイジーな音、Public Image Ltd. "Metal Box" (Virgin, '79) や Cocteau Twin "Garlands" (4AD, '82) との共通点を感じるのだ。 対して、多くの Brit pop とか digital rock の音を聴くとき、これらの 音が punk 以降でないと感じる点は、その音処理がどう聴いても「 Public Image Ltd. "Metal Box" を通過した音」に聴こえない、ということだ。 別にダブワイズであればいい、と思っているわけでない。ロック音楽の 持っている音の階層構造に対して無邪気過ぎるように思うのだ。破壊的で あれ作為的であれ、punk 以降ではそれに自覚的にならざるを得なかった はずなのだが…。 そして、この The Third Eye Foundation や US の Tortoise のような out rock と呼ばれる音に、音の階層構造に自覚的、という意味での 「punk 以降ならではの音」を感じるのだ。 "The Wire"誌97年5月号に The Third Eye Foundation の特集記事 [1] が あるのだが、それによると、Matt Elliot は23歳、髪をドレッドロックに した白人だ。The Pop Group を生んだ Bristol ならではの音なのかな、と、 ふと思った。 参考文献: [1] Simon Hopkins: Shapeshifter - The Third Eye Foundation, The Wire, Issue 159, May, 1997. 97/5/11 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕