フランス極右政党右翼政権反対企画、第二弾。 Khaled が Strassbourg で反フロン・ナシオナル (FN) コンサートを行った3月20日。 「一方ボルドーのバンド、ノワール・デジールは3月20日、FNが市政を執る最大の 町トゥーロンで、コンサートに先だってアンチFN政治討論会を開催。(中略) 最新 アルバムでもFNに言及した歌が含まれており、その本気の怒り方は特筆に値する。 「トゥーロンがFNの実験室なら、それは同時に抗ファシズム運動の試験台でもある」 とノワール・デジールは訴える。」--- 向風 三郎 (1997)[1] Noir Desir "666.667 Club" (Barclay, 533 442-2, '96, CD) - 1)666.667 Club 2)Fin De Siecle 3)Un Jour En France 4)A Ton Etoile 5)Ernestine 6)Comme Ellevient 7)Prayer For Wanker 8)Les Persiennes 9)L'Homme Presse 10)Lazy 11)A La Longue 12)Septembre, En Attendant - Produced by Ted Niceley and Noir Desir - Serge Teyssot-Gay (g,organ), Bertrant Cantat (g,harmonica,vo), Denis Barthe (ds,perc,vo), Jean-Paul Roy (b) その反FNソング "Un Jour En France" を含む Noir Desir (黒い欲望) の新作が、 この暗い青空のジャケットのこのCDだ。 前作同様、Fugazi (Washington DC の punk 〜 alternative rock バンド) の プロデューサ Ted Nicely の制作ということで、もろにその手の音になっている。 前作の後に喉を痛めて活動再開が危ぶまれていたという Bertrant Cantat の 絞り出すようながなり声が、類型的な US alternative rock な音に乗る。 初めて "Un Jour En France" を聴いたときなど、「Nirvana みたい」と思って しまった程だ。それほどベースラインが重くないのだが。 もちろん、東欧風のフィドルの音が入ったりと、工夫が見られる。が、それが この作品のポイントになっているとは思わない。むしろ、歌のフランス語の 響きがいいのだ。英語ならもっと吐き捨てるような感じになるのだろうが、 それがいい具合に旋律にまとわりつく感じ (そういう感覚は R.E.M.に近い。) になる。もちろん、いわゆる French pop 的な歌い方でもない。 確かに US alternative の真似事にすぎないのなら、Fugazi なり Nirvana なり 聴いていたほうがまし、ということはある。しかし、あえて Noir Desir を聴き たいと思わせるだけの独自の面白さを、この "666.667 Club" に聴くことが できると、僕は思う。 Noir Desir は、France 南西部 Aquitaine の中心都市 Bordeaux 出身。 Noir Desir "Ou Veux-Tu Qu'Je R'Garde" (Barcley, 831 484-2, '87, CD) で デヴュー。Theo Hokara (ex- Orchestre Rouge, Passion Fodder) の制作の ということで、以前に中古でみかけたときに買って聴いてみたのだが、平凡な new wave rock といったところだった。久々に発掘して聴いてみたが評価は同じ。 まともになったものだ。 その後、Ian Broudie 制作で1枚、で Ted Nicely 制作で2枚ということで、 "666.667 Club" は4枚目のアルバムと思われる。 ちなみに、Theo Hokara の Orchestre Rouge (赤の楽団) は80s初頭に 「France の Joy Division」(言い過ぎ。) と一部で話題だった (バンド名から して明らかに左翼的な) バンドだった。Orchestre Rouge "More Passion Fodder" (RCA, PL37758, '83, LP) の後に Passion Fodder に名前を変えて、 Barclay / Beggars Banquet から数作リリースがある。 そう、3月20日に反FNコンサートをした Khaled や Noir Desir のレーベルが Barclay であるのは偶然ではないかもしれない。Barclay は「メジャー (Polygram 傘下) の中では特異な明白な左翼のカラーを持ったレーベルだった」[2] からだ。Passion Fodder、Carte De Sejour 〜 Rachid Taha、Kent、…、と所属の アーティストを見てみるといい。そして、それはある意味でミッテラン時代 ならではのことだった。今でもこうして頑張っているアーティストがいるが。 むしろ、今や、Miossec や Dominique A のようなアンデ (independent) の レーベルのアーティストの時代なのかもしれない。 (つづく) [1] 向風 三郎: 欧州西風東風, ミュージック・マガジン, 1997年5月号, p.169. [2] 向風 三郎: 欧州西風東風, ミュージック・マガジン, 1996年4月号, p.111. 97/6/1 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕