Tim Berne, Marc Ducret, Tom Rainey "Big Satan" (Winter & Winter, 910 005-2, CD) - Tim Berne (baritone + alto saxophone), Marc Ducret (electric guitar) Tom Rainey (drums) Tim Berne "Bloodcount Unwound" (Screwgun, SCREW U 70001, '97, 3CD) で、 ドライブ感 (というより暴走感) も素晴らしい free jazz / improv. 演奏を くれた Tim Berne の続いてのリーダー作は、Bloodcount を抜けた Marc Ducret を含む bass-less の trio 構成。 guitar ではなく cello であった Miniature と構成から似た音という意味では 全体として辛気臭系ではあるのだが。Bloodcount で静を担っていた Ducret だけに もっと静かな展開かと思いきや、一曲目の頭からノリが良くてびっくり。今の Tim Berne の演奏は勢いがいい形ででていることが多い。 しかし、Dave Douglas Tiny Bell Trio といい、Ray Anderson, Han Bennink, Christy Doran といい、A.D.D. Trio といい、Recyclers といい、bass-less の guitar trio がはやっているのだろうか。面白い演奏をしてくれる trio ばかり なので、特に気になる。単に bass を guitar に単純に置きかえたわけでない ので、3楽器の関係性というかバランスの取り方が興味深いのだが。 Marc Ducret "(detail)" (Winter & Winter, 910 003-2, CD) - Recorded on 96/1/20-23 - Marc Ducret (6 & 12 strings guitars) さて、この trio の guitar 奏者 Marc Ducret のソロも、同じ Winter & Winter からリリース。 Lombarde, Italia の17世紀に建てられた屋敷で録音されたこの solo は、 アコスティックな guitar の残響の繊細な作品。澄んだ音は緊張感もあって、 悪くはないのだが。B.G.M.に使うには素敵なのだが。 Winter & Winter の制作者の一人 Stefan Winter は、85年に ENJA から独立し、 独立系レーベル JMT (Jazz Music Today) を Munich, Germany に設立 [1]、 Steve Coleman、Cassandra Wilson、Jean-Paul Bourelly、Greg Osby などの いわゆる M-base のミュージシャンを初めて紹介した。(その記録を概覧するには Various Artists "Flashback On M-base" (JMT, 314 514 010-2, '93, CD) が 御薦め。) それだけでなく Tim Berne、Paul Motian、Dave Holland などの、 post free / post modern な jazz を紹介してきたレーベルだった。しかし、 90年代に大手 PolyGram Jazz 傘下となり、95年に非採算レーベルとして整理 されてしまった。 Winter & Winter は、Stefan Winter が classic 畑にいた兄 Franz Winter と 新たに作ったレーベル。classic の Basic Edition、new music (現代音楽) の New Edition、jazz (というか JMT の延長) の Artist Edition、編集盤の Special Editon の4つのシリーズからなっている。全部チェックしてないが、 New Edition と Artists Edition の出だしは面白そうなリリースなので、 期待したい。しかし、独立系だというのに、4つもシリーズを作って10タイトルも いきなりリリースして、大丈夫なのだろうか? CDのケースも凝っていて、Winter & Winter で独自開発したものという。 イタリア製の紙を使ってドイツで手作業で製本しているという凝りようだが、 出し入れに難があるのが困りものなのだが。デザインは JMT のジャケット デザインを手がけてきた Stephen Byram。90年まで CBS のアート・ディレクター だった人なのだが、今や JMT 〜 Winter & Winter の専属という感もあり、 このレーベルのイメージ作りに一役買っている感もある。 参考文献: 脇谷 浩昭: JMT / Minor Music, イキのいい若手ジャズを紹介する新レーベル, ミュージック・マガジン, 1987年8月号, pp.76-89. 97/6/29 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕