Charles Gayle solo バーバー富士, 上尾 97/7/7 19:30- もっと頻繁に行きたいとは思っているのだが、上尾となるとなかなか行かれない。 去年4月の Peter Broetzman のソロ以来になってしまった。このときも、手の 届きそうな近さで、耳がぎしぎしいいそうな感覚を堪能したので、それが楽しみ だった。 19時半頃に会場のバーバー富士3Fのオーディオルームへ入ると、既に10人余り 人がいた。知った顔も数人いる。その後も少しずつ人が増え、最終的には20人 ばかりいただろうか。立客も出るほどの盛況だった。upright piano も演奏する ということで、部屋を横長の向きにつかって、入って右手に演奏スペースを 設けてある。やはり最前列のほぼ中央に席をとった。 20時前には Charles Gayle が、最新作の The Charles Gayle Quartet "Delivered" (Thirsty Eye, '97) のリーフレットの写真のような道化の化粧をして登場。 写真では、そのためにわざわざそういう扮装をしていたのだと思っていたので、 ちょっと驚き。帽子はかぶっていなかったが、室内なのに道化風のぶかぶかの 靴を履いていた。手には、三輪そうめんのうちわ。 第一セットは、tenor sax、tenor sax、piano。人が多く冷房があまり効かず 暑いこともあり、演奏の合間に休んでうちわで扇ぐことしきり。piano のソロの 後もしばらく休んでいたら、主催者さんから声がかかり、休憩に入った。 20時半から20分ほどの休憩の後の第二セットは、tenor sax、soprano sax piano、tenor sax。最後に観客のみんなをうちわで扇いでくれておしまい。 終ったら22時前だった。 巧いというのとはまた違う味のある演奏だった。慣用的な表現を排した完全即興 ではなく、ちょっと愁いのある blues / gospel っぽいフレーズを即興的に 繰り出してくるという感じ。sax では Albert Ayler なんかを連想する節回し だし、piano では Theloneos Monk の曲もやった。けど、なにか狙っている、 というよりも、自然に出てくるというか楽しそうに鼻歌を歌っている延長と いう感で、普通の家の室内という場所と合間って、一緒に楽しめてしまった。 前回の Peter Broetzmann では sax のブロウ耳がぎしぎしした感じがしたのだが、 Charles Gayle の演奏は、音は大きいが、立ち上がりが鈍いせいか、あまりそんな 感じがしなかった。ただ、soprano sax の演奏は、それとは思えないほど太い 音が出ていた。曲がった soprano sax なので、「本当にこれは soprano なのか? alto じゃないのか?」と思ってしまうくらい。piano の演奏のときは、必ず左手に 軍手をしていた。低音部をガーンガーンと叩いて drone のような効果を出したり するので、そういう演奏から手を守るためかな、と漠然には思っていたが。 piano を演奏するときは、たいてい旋律を口すざみながら(うなりながら、か) 弾くのだが、後半はときどき tenor sax を弾きながらもそうしていた。 演奏が終った後、リヴィングルームで休む Gayle を訪れて、新作 "Delivered" の リーフレットにサインをもらいながら、道化のような化粧について尋ねた。 はじめ、「この化粧にはどういう意味があるのですか?」と尋ねたら「自分の 内から出てきているものを表現している。」みたいなことを言っていたので。 「まるで道化 (fool) のようですね。」と言ったら、肯定して「そう、道化と いうのは、最も王様に近い所にいるからね。あと、あまり演奏をシリアスに とって欲しくない、っていうのもあるんだ。」みたいなことも言っていた。 あと、いわゆるメインストリームじゃないんだ、という表現でもあると言って いた。初リーダー作 Charles Gayle Trio "Homeless" (Silkheart, '88) の題名 通り長らくホームレスをしていたストリート・ミュージシャンと以前から聞いて いたが、なんでも3年前までホームレスだったそう。そのせいか、世間離れして いるような感もあったが。 さて、この来日直前にリリースされたのが、このCDだ。 The Charles Gayle Quartet "Delivered" (Thirsty Ear, thi21424.2, '97, CD) - Charles Gayle (ts), James Jones (p), Gerald Benson (b), Kalil Madi (ds) piano 入り quartet という比較的伝統的な構成で、バックの面子も知らない人 ばかり。free 〜 loft jazz 路線でバリバリというほどには甘い曲が続き、 ちょっと期待ハズレ。というか、甘く聴こえるのは、sax にかかっている妙な 残響のせいもあるかな。ううむ。 97/7/9 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕