富士ロックフェスティヴァルも、独りでふらりといかれる類のイヴェントでは ないという感で行く気が失せていたところ、Squarepusher の単独公演。 当日券なしということで直前の週末にチケット売場へいったら、まだ前売券が あった。整理番号は悪かったが。2nd の Squarepusher "Hard Normal Daddy" (Warp, WARP50CD, '97, CD) の評判がいまいちだったから、ということもある のだろうか。 Squarepusher Liquid Room, 新宿 97/7/24, 19:00 - 20時頃に行ったらまだ入場整理中。暫くして入場できたが、整理番号からして 1,500〜2,000人は入れたのだろうか。混雑はしていたが、予想していたほどでは なかった。あまり踊るつもりはなかったのでフロアには降りず、ロビーや後ろの バーのあたりをしばらくうろうろしていたら、ステージがよく見下ろせる位置に 来られたので、そのままそこに陣取ることにした。 暫く DJ が続いた後、前座の女性歌手+男性バンド (Sneaker Pimps ?) 登場。 いわゆる trip hop 風の音なのだが、女性歌手の声が個性的というわけでも、 歌がいいわけでもないので、若干のムードだけ。低音はよく出ていたけれど。 続いての DJ は特にびりびりいう低音など最初の DJ より良かったが、聴いて いるうちに飽きも出てしまった。drum'n'bass を中心に組立ててはいたが。 Roni Size の "Hi-Potent" がかかったのだけど、あの曲でのうなる bass の 音は、フロアを揺るがす重低音とはまた違う位置にあることに気付いた。そうか。 DJ が終わって静かになったところで、Tom `Squarepusher' Jenkinson が登場。 まずはステージ中央にせっとされたサンプラー/再生装置と思われる機材を いじりはじめる。ピーという軽いハウリング音がその間じゅう出続けていたの だけれども、たまに途切れることがあるとフロアがざわめく。 暫くすると、electric bass を抱えて。ガーン、カキカキカキと、Derek Bailey や Henry Kaiser の guitar を思い出させるような音をちょっと立てた後に、1st の Squarepuser "Feed Me Weird Things" (Rephlex, CAT037CD, '96, CD) の中でも 最も free improv. っぽい "The Swifty" を演奏しはじめた。演奏は、弦を叩い たりひっかいたりするような、free improv 系の人がよくやる electric guitar の 演奏を、electric bass でやってみせているという感じ。鋭い音を多用する一方、 ノリのいい演奏もはさみこむ余裕もあり。おそらくアドリブ。ステージ上を楽し そうに動きながら演奏していた。"The Swifty" は1回目のアンコールの際にも 再び演奏もしたわけで、ある意味で即興 electric bass 奏者としての彼の 見せ場のなのかもしれない。 確か "The Swifty" が終わった後、ちょっとだけ無伴奏で bass をガーン、 ガチャガチャと演奏したが、すぐ次の曲に入ってしまった。無伴奏の bass ソロを もっと聴いてみたい気がしてしまった。 さて、曲は 2nd の "Hard Normal Daddy" からの曲が中心だったと思うが、 ライヴのせいか音の装飾が目立たずリズムの骨格がむきだしになっていて、 それがいい。前座やDJの音と比べると明らかなのだけど、床を揺るがすような 重低音はほとんど出ておらず、そういう点でも Tom Jenkinson の弾く electric bass というのは、楽しそうに動きまわって弾く姿もあって、実に guitar 的だ。 いくら高速の打ち込みが鳴りつづけていても、それを伴奏にしての bass ソロ という感なのだ。 後半、bass を置いて機材をいじっての演奏になった。このときは、床を揺るがす ような低音もあり、かなり dance music のニュアンスが強くなる。しかし、 強烈なハウリング音からもはや drum'n'bass とはいえない脱穀機のような 超高速 breakbeats に突入、という展開がけっこうあり、アジるように指揮する ような手振りをしながらマイクでアジるような声を出し様子は、むしろ punk 的 ですらあった。 アンコールは2回、あまり曲を用意していなかったようで、何を演奏しようか 困っていたようであったが、ともに bass を演奏した。終わったのは24時頃。 26時終了ということで、この後にDJタイムがあるのかもしれなかったが、 終電に間に合う時間だったので、帰ってしまった。 こうしてみると、CD で聴く以上に、いわゆる dance / club music とは異質な 音楽なのだな、と思った。もう少し空いていたら、僕だってフロアで踊っていた だろうし、実際フロアはノッていたけれども。 僕は、もっと bass 奏者としての Tom Jenkinson を観てみたい。打ち込みなしの bass ソロをやったらどうなるのだろう。bass に live electronics をかませて、 もっと変な演奏に挑戦してみて欲しいし。やはり、機材だけを相手にせずに、 他の演奏者と対決するのも聴いてみたい。Pat Metheny とか相性よさそうに 思うのだが…。 97/7/26 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕