Autour De Lucie _Chanson Sans Issue_ (Le Village Vert, VIVE31, '97, CDS) - 1) par Gilles Martin 2)Snooze Mix par Snooze 3)Tant d'Efforts par Le Monocle 4)Super Club par Tele Pop Music 5)Lazy But Clubby (Dom & Nick RMX) 6)Didactic Mix par Bang Bang 7)Remix par DJ Cam 8)Hip Hop Madness Mix par Extra Lucid Lilith Fair にも参加し、今や France の代表的な indie pop / rock バンドに なったといえる Autour De Lucie の2ndアルバム _Immobile_ (Le Village Vert, VIVE26, '97, CD) からの remix single がリリースされた。バンドの顔ともいえる 女性歌手 Valerie Leulliot のモノクロ写真がジャケットに使われるという話 だったのだが、リリース直前に差し替えられたそう。 _Immobile_ は80年代に Crammed Discs で制作をてがけていた Gilles Martinの 制作で、音処理もかなり凝っている。そんな中の曲を Snooze や DJ Cam といった France の abstract hip hop のアーティストが remix しているということで 期待したのだが。有機的な仕上がりではない。元歌を生かしたというどころか、 Autour De Lucie である必然も感じられない程。Valerie の歌声がかろうじてその 痕跡を残しているが。それでは、France の abstract hip hop のショーケースと しても出来がいいかというと、そうでもなし。ちょっと中途半端か。 Snooze や DJ Cam は _Freezone_ シリーズのような SSR / Crammed Discs の編集盤に よく参加しており、A&R の Marc Hollander や Samy Birnbach a.k.a. DJ Morpheus (ex-Minimal Compact) と縁が深い。ほとんど接点のなかった France の indie pop / rock と abstract hip hop の間で、こういった remix 企画ができた背景には、 Marc Hollander や Samy Birnbach a.k.a. DJ Morpheus (ex- Minimal Compact) と Gilles Martin の縁もあるのかもしれない。もちろん、英米での remix の流行と いうものあるだろうが。 Gilles Martin は、Miossec _Boire_ (Play It Again Sam, PIAS311CD, '95, CD) や Dominique A _La Memoire Neuve_ (Lithium, 840378-2, '96, CD) といった話題作を 制作し、最近の France の indie pop/rock の仕掛け人的な位置にもいる。 今後、こういった制作者を鍵に、France でも indie pop / rock と abstract hip hop や techno との競演も増え、面白い作品が出てくるのではないか、 そんな期待はさせてくれる remix 盤ではある。 さて、この Autour De Lucie の remix を手掛けている7つのユニットのうち4つが 収録されている France の abstract hip hop / techno シーンを概観できる いい編集盤が出ている。 Various Artists _Source Lab 3 x/y_ (Source / Virgin, CDVIR58, '97, 2CD) - Fantom, Hi-Way, Tele Pop Musik, Aleph, Chateau Flight, Extra Lucid, Cube, Low Tone Priority, Les Petroleuses, DJ Cam, Scratch-Pet-Land, Le Tone, Mozesli, Maisons Laffitte, Influx, Magic Malik, Grand-Popo Football Club, ODC, Bel Air Project, Black Strobe, DJ Gregory, Taka Djahma, Jean-Jacques Perrey & Air France の Virgin 傘下の dance music のレーベルの編集盤シリーズ。去年の Various Artists _Source Lab 2_ (Source, 841714-2, '96, CD) に続く第3弾は CD 2枚組。(1枚づつバラ売りされているものもある。) 分量が増えても質の平均は 落ちておらず、裾野が広くなった感がする。abstract hip hop というより、 もっと抽象的で、techno 〜 drum'n'bass 〜 downtempo breakbeats と言った方が しっくりする音。SSR / Crammed Discs の _Freezone_ シリーズに感触が近い。 同じような内容の企画盤としては、こんな編集盤も出ている。 Various Artists _La Yellow Collection_ (Yellow Productions / East West, 0630 18391-2, '97, 2CD) - La Yellow 357, Dimitri From Paris, Louise Vertigo, Frederic Galliano, Kid Loco, Jean-Louis Murat, Julius Papp, Ex-Press, Reminiscence Quartet, Fresh Lab, DJ Cam, The Mighty Bop, EJM, Bronco, Bob Sinclar, Menelik, Cutee B., Ingrid De Lambre Source と並ぶ France の dance music レーベル Yellow Productions の93年から の活動を総括するような内容のCD 2枚組。DJ Cam や Dimitri From Paris など _Source Lab_ シリーズと重なるが、ずっと下世話な感じだ。 スパイ映画音楽ネタな La Yellow 357 とか、Jean-Louis Murat のような歌モノや、 Nemelik の rap もあり多彩ともいえるか、ちょっと散漫か。しかし、rap と abstract hip hop のシーンの間にギャップを感じる (それは France だけでは ないが) ことが多いだけに、Nemelik のような rap の参加は興味深い。 Various Artists _Megasoft Office 97_ (F Communication, F066CD, '97, CD) - Elegia, Ready Made, Feedback, Nova Nova feat. Elisa, Chaotik Ramses, Aqua Bassino, A Reminiscent Drive, Juantrip' さて、Source や Yellow Productions の abstruct hip hop また少し距離がある のが techno / house なのだが、その中心的なレーベル F Communication の 最新の編集盤がこれ。 Laurant Garnier や St German のような主なアーティストは収録されておらず、 Various Artists _La Collection Chapter 2_ (F Communication, F045DCD, '96, 2CD) のようなサンプラーとはまた性格が違うが。 全体的にダウンテンポで凡庸かなと思ったのだが、ピアノのバックに女性歌手が 歌う Nova Nova feat. Elisa "Bewildered" がぽこっと入っていて、あれっという 感じ。歌が巧いとか曲がいい、とかいう程ではないのだけど、昔の Les Disques Du Crepuscule レーベルあたりから出てきそうな展開で、これを店で聴いて、つい 買ってしまった。というか、全体的に80年代前半ぽいような気がする。ううむ。 テンション低いので B.G.M.向け。 と、12" で追いかけるほどの気合は全然ない、というか、入れこみたくなる アーティストはいないのだけど、こういった編集盤で流して聴いているとけっこう 楽しめてしまう (実際、かける頻度は多い)、そんな音だ。ううむ。なんなのだ。 _ _ _ さて、既に時期はずれになってしまったのだが。 Various Artists _11'30 Contre Les Lois Racistes_ (Cercle Rouge Productions / Play It Again Sam France / Crepuscule France, TWI1039, '97, CDS) - Akhenaton & Freeman (IAM), Arco & Mystik, Assassin, AZE, Djoloff, Fabe Kabal, Menelik, Passi & Stomy Bugsy (du Ministere Amer), Radicalkicker, Jean-Francois Richet, Rootsneg, Sleo, Soldatsfadas, White & Spirit, Yazid Khaled が Strassbourg で、Noir Desir が Toulon で反 FN (Front National) コンサートを開いた 97/3/20 のあくる 21日に France でリリースされたこのCDSは、 France の rapper が集結しての「人種差別法に反対する11分30秒」を収録したもの。 France の当時の保守政権が移民を排斥するために定めた Pasqua-Debre 法= 人種差別法に関する rap なのだが。6月の総選挙でこの法を廃止すると口約した 左派が圧勝し、実際、失われた移民の権利は回復しつつある。 が、このCDSを僕が手に入れたのは7月になってから。France で輸出に携わって いる人からの噂では、日本の輸入業者の「政治嫌い」のおかげで、オファーした にもかかわらず、なかなか扱ってもらえなかったという。 これをリリースした Les Disques Du Crepuscule といえば、80年代から活動して いる有名なレーベルで、ちょっと「おしゃれ」なイメージもあって扱っている 輸入盤店も多い。けれども、こういう CDS はそういう輸入盤店がこのレーベルに 付加している「おしゃれ」なイメージに反するために、逆に扱われ辛いのかも しれない。そう、Various Artists _Ghost Of Christmas Past_ (Les Disques Du Crepuscule, TWI658, '86, LP) には、Belgium での Flamand と Wallonの紛争を 非難するビラが入っていたり、とか、そういう所も Les Disques Du Crepuscule の 持ち味だと僕は思っているのだが…。 97/9/7 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕