続いて11日は、Misha Mengelberg - 豊住 芳三郎 duo @ 世田谷美術館 は パスして、こちらで2人を待ち受けることにする。 Jazz Now From Eupore, 横濱ジャズ・プロムナード '97 ランドマークホール, MM21 (桜木町) 97/10/11, 12:00-20:00 今年で5年目となる横濱ジャズ・プロムナード。今年は、ランドマークホールで ヨーロッパの free jazz / improv. の特集ともいえる企画があったので、 昼前から会場に臨んで、フルに観ることにした。他会場でも気になるものは あったけど、移動などによるロスを考えると、腰を据えた方が良いかと。 会場はこの面子で客を埋めるにはかなり広いホールだった。もっとこじんまり した会場で観たかった。けれども、7時間余りという長帳場となったので、 いいシートのホールでゆったり観られたのは、良かったのかもしれない。 各セット約1時間。セット組み替えで間に30分ばかり休憩があった。 Edward Vesala with Sound & Fury (Edward Vesara (ds), Iro Haaria (p,key), Matti Riikonen (tp), Jouni Kannisto (sax,fl), Pepa Palvinen (sax,fl), Jorma Tapio (sax,bcl,fl), Jimi Suman (el-g)) 12:00- まずは、Finland のベテランds奏者 Edward Vesala が'90から率いる Sound & Fury。派手な色の服がかわいい。演奏は4管の目立ち方に比べ、 リズム隊が地味。key,p なんて陰が薄すぎて、何を演奏していたのかわから ないくらい。ソロを回しているときに、ソリストを他の人たちが鳴り物で 邪魔したりしていたのは面白かったが。ま、そんなもんか。 高瀬 アキ (p) - Rudi Mahall (bcl) - 井野 信義 (b) trio 13:30- Berlin Contemporary Jazz Orchestra のベテラン日本人2人と、その若手 bcl奏者からなるtrio。ds-less piano のtrioということで、Mahall (bcl) も 抜いたような軽い音を多用していたのか、いまいち。bcl と b の音域が ぶつかりがちなのか、bcl 抜きの p-b duo や、b 抜きの p-bcl duo のときの 方が良かった。prepared として piano にピンポン玉を入れての演奏は、 跳ね上がるピンポン玉も面白かったが。 Peter Broetzmann (reeds) - Johannes Bauer (tmb)- 羽野 昌二 (ds) trio 15:00- ドイツのベテラン2管に日本人ベテランdsのtrio。来日したばかりでまだまだ 元気な Broetzmann は、顔の真っ赤にしてひたすらうなるよう強く吹きまくる。 対する Bauer はユーモラスなしぐさを交えながら、多彩な音色で応酬。 吹くだけでなくスキャットしたり。それを 羽野 がエネルギッシュなドラミングで 煽る煽る。Broetzmann - 羽野 だけなら単なるゴリゴリ力技に始終してしまう ことになっていたかもしれないけれども、Bauer のおかけで柔軟で変化のある セットになったと思う。もちろんアンコールあり。この日、一番のセットだった。 Misha Mengelberg (p) - 豊住 芳三郎 (ds,perc) - 河野 雅彦 (tmb) trio 16:30- オランダのベテランp奏者と、Misha と競演歴長い日本人ベテランdsに、 NY在住のtmb奏者を加えてのbass-less piano trio。豊住のリズミカルなdsは いいのだが、ホールということでか遠慮なく叩きまくるので、管を意識したの ようなバッキング的な Misha の演奏をかき消しがち。で、それに挟まれた 河野は、そんな Misha - 豊住 の演奏にもかかわらず、最初は遠慮がちに 吹くので、どうもちぐはぐ。河野がやっとペースが掴みかけたかな、という 頃には、セット終了。それでも、期待してアンコールしたら、やってくれた、 十八番 Monk の曲。Misha もちょっとハズれたようなフレーズをくり出し、 tmbも鳴っていて、dsに負けてない。これは良かった。最初からこうやって くれれば良かったのに。この日の二番目は、このセットのアンコール後か。 Alexander von Schlippenbach (p) - Rudi Mahall (bcl) - Paul Lovens (ds) trio 18:00- Evan Parker が夫人の急な重病のため来日中止。代わりに Rudi Mahall を 加えてのbass-less piano trio。やはり、Berlin Contemporary Jazz Orchestra のサブセットではある。先の trio でも管の陰が薄かったけど、こちらも薄い。 急な代役のうえ、大物 p-ds に挟まれてしまったせいか? あまり強いブロウは せずにフリーキーなトーンを多用するのだが、どうしても音は小さい。 Lovens はとてもコンパクトなdsセット。ワイシャツ・ネクタイ姿で叩く、 というのがなんとも面白かった。あまりガシガシ叩いてpやbclの音をかき消す ことはせず、bcl が細いフリーキー音になるとシンバルの摩擦音に切り替え たりと、いいサポートにはなっていたと思う。予定では2時間だったけれど、 アンコールを含めて1時間。まあ、急造 trio だし、やむなしか。 全体としては、大ハズレもなければ大アタリもなし。安心して聴かれるもの ではあった。若手は Rudi Mahall くらいで (まあ Vesara を除く Sound & Fury のメンバーもそうだが。)、70s から一線級のベテラン大物ばかり、という こともあるだろう。 そう、Jazz Now From Europe と称しているが、これは now ではない。 Jazz 70s From Europe とでも言うべきものだ。それは、ミュージシャンの ほとんどが70sからの大物だったということだけではない。最後の bass-less piano trio のような編成コンセプト自体も、とても70s的だともいえる。 もちろん、今回出演したミュージシャンが過去の遺物になってしまったと、 主張したいわけではない。ベテランばかり呼んで、ミュージシャンの個性 などの差はあるものの、Broetzmann, Van Hove, Bennink plus Mangelsdorf, _Live In Berlin '71_ (FMP) のコンセプトとたいして変わらないセットを 並べて (後半3セットは順に p, reeds, tmb を抜いたもの) 、それから25年 たった今さら now はないだろう。こういう'70s FMP / Enja / ECM 的な コンセプトではなく、Deux Z / JMT/W&W / Songlines / Hat Art あたりの レーベルが90sに入ってプッシュしている bass-less guitar/cello trio などの試みをしている界隈の音があるだろう。例えば The Recyclers の ような音こそ、今ではないのか? 別に piano を排除しろというわけではない。 bass-less guitar trio などの対比によって、bass-less piano trio の ような編成も、栄えるだろうに。 もちろん、こんな大物でも呼ばないと集客できないという意見もあるかも しれない。このような組み合わせでも呼んだのはいいことだと思う。今まで ロックばかり聴いていて70sの Europe での free jazz / improv. の試みを 知らない人に、是非とも聴いて欲しい企画だった。だからこそ、10月頭の Music Merge Festival と住み分けてしまったのが惜しい。MMF には20歳代 くらいの若い世代、Jazz Now From Europe には昔から free jazz / improv. から聴いてきたおやじ世代。全然 merge じゃない Music Merge Fest. に、 全然 now じゃない Jazz Now From Europe だったのだ。そういう点では、 この2つを併せたような企画だった、神戸の Festival Beyond Innocence は どうだったのだろうか? (続く) 97/10/12 _ _ _ このライヴで Misha Mengelberg (p) - 豊住 芳三郎 (ds,perc) の2人と 共演した 河野 雅彦 (tmb) さんと、この週末 (18日) に Mary Jane で お話する機会がありました。 「横浜で聞きました」と話をしたところ、まず、音はどうだった、と尋ね られたので、ここに書いたようなことを話しました。世田谷から駆けつけた 2人と一緒にやるのは、やり辛かったですか? と尋ねたところ、いや、 ステージの上では音は良かったし、Misha Mengelberg の音もよく聴こえて いたんだけどね、とのこと。 客の反応を見て、ちゃんと聴こえていないのではないか、と気になっていた ようです。なんでも PA 調整を客席側ではなく、ステージの脇でやっていた そうで、どうもうまくいってなかったようです。 そうだとすると、Rudi Mahall の演奏がいまいちひっこんで聴こえたのも、 そのせいかもしれません。 河野 さんも参加した William Parker の big band のCD 2枚組の新作 William Parker's Little Huey Creative Music Orchestra, _Sunrise In The Tone World_ (Aum Fedelity, AUM002/3, '97, 2CD) を店に置いて いってくれました。William Parker はもちろん、Susie Ibarra など あの界隈が終結した big band です。 97/10/20 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕