11日の長帳場でかなり疲れていたけれども、行ってきました。行ってよかった。 Yuko Fujiyama Trio - Improvisation in American History 世田谷美術館一階展示室 97/10/12, 15:00-16:00 - Yuko Fujiyama Trio (藤山 祐子 (p), Susie Ibarra (ds), Wilber Morris (b)) 10分ほど前に展示室に設定された会場に着いたら、並べられた席はすでに いっぱい。立ち見もけっこういる。一見して、ジャズにも現代美術にも特別な 興味があるわけではない、週末の教養に美術館に来たという一般客がほとんど。 なんとか、最前列の床に陣取る。だが、その後、隣に座って話かけてきた 一見普通そうなおじさんは、話するうちに、豊住さんと知り合いで、昨日も 世田谷で Misha Mengelberg - 豊住 芳三郎 duo を観たということが判明。 去年の Evan Parker 無料コンサートも途中でかなり帰ってしまったし、と いう話をしていたら、いつのまにか背後にいつも「いーぐる」での講演などに 来てくれる女の子が。来る人は来るな、やはり。 で、小柄な女性2人に大男登場。まずは即興でガーンと一曲。続いて作曲物。 演奏は良かったのだが、これが終わったら、かなりの客が帰ってしまった。 しかし、おかげで空いた最前列 Susie Ibarra のすぐ前の席につくことができた。 そこで、終わりまで演奏を楽しんだ。ds と b のソロを含め約1時間か。 即興よりも作曲物が多かった。 予想通り、Cecil Taylor school と言えるような piano trio だった。 Ibarra は無駄な体の動きがないので一見とても淡々として見えるが、 手数多く細かく叩き出すポリリズミックなビートは、さすが Milford Graves の弟子。藤山はやはり Cecil Taylor や Matthew Shipp を思わせるものが あるが、彼らなら決して弾かないであろうインコードの甘いメロディも 弾くので、逆にそれが新鮮。そのときは Ibarra は着実なリズムを叩く。 ヴェテラン Wilber Morris は2人を見守るように堅実に基底音を繰り 出していた。たしかにCDで聴く Cecil Taylor の The Feel Trio (おそらく今のところ最強の piano trio) や Matthew Shipp Trio に 比べてもまだ小粒だとは思うけれども、生で充分に楽しめた演奏だった。 展示室内での演奏ということで、ちょっとハップニング的な要素もあるかと 思ったけど、それはなかった。ちょっと残念。 _ _ _ 演奏が終わった後、藤山さんに声をかけました。藤山さんの演奏は初めて 聴いたのですが、Cecil Taylor や Matthew Shipp が好きでCDでよく聴いて います、と言ったら、こういう音楽が好きな人は少ないのでここにそういう 人がいてうれしい、と、とても喜んでくれました。Cecil Taylor や Matthew Shipp なら決して弾かないインコードの甘いメロディを弾くので、 逆にそれが新鮮でした、と感想を言ったら、日本人の女の子だから、と 言って笑っていました。そのまま Susie Ibarra、Wilber Morris も 交えて即席インタヴューというか、単なるおしゃべり。日本帰国ツアー なので私がリーダーのふりしているけど、実は Wilber がリーダーなの、と 藤山さんが告白。普段 NY では2管を加えた One World Ensemble という quintet で活動しているとのこと。ds のフィリピン系アメリカ人の Susie は 小柄でかわいい女の子 (27歳!)。片言で日本語もしゃべってくれました。 David S. Ware のCDなどで演奏を聴いていたので来日を楽しみにしていました、 と言ったら、とっても喜んでくれました。昨日は横浜で Jazz Now From Europe のセッションを聴いていたんですが、Peter Broetzman の trio が 一番良かったです、と言ったら、Wilber が、え、Broetzman も来てるの? と 驚いてました。10日の Jazz Now From New York の方に出たのだけど、 他で何やっているのか知らなかったそう。Broetzman と Morris は Cecil Taylor などを通して共演したりしているわけで、New York meets Europe みたいなのも聴いてみたかったな。 で、3人のサインを、会場で売っていた最近出たという One World Ensemble のCDに。 One World Ensemble _Breathing Together_ (Freedom Jazz, FFJ-CD-001, '97, CD) - Recorded at the Knitting Factory 95/5/31 - Produced by Wilber Morris and Samuel Rivers - Daniel Carter (as,ts,fl,tp), Sabir Mateen (ts,fl), Yuko Fujiyama (p), Susie Ibarra (perc), Wilber Morris (b) Wilber いわく、君の趣味ならきっと気にいるはず。藤山さんは2年前の 録音で今とかなりコンセプトが違う、と言っていたが。帰って一通り聴いた けれども、あまり Cecil Taylor っぽくなくて、70s の地味な loft みたい。 このレーベルの exective producer って Sam Rivers なのか、ってことで、 ふと、_Wildflowers Sessions_ とか思い出したり。 97/10/12 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕