The Recyclers accompagnent Katerine, Ignatus, Sasha Andres et Irene Jacob
_Morceaux Choisis_
(Rectangle, REC I, '97, LP)
- A1)J'ai Vu Des Rois Serviles (Ignatus) 2)La Vache Enragee (Katerine)
3)Vaise De Melody (Sasha Andres) 4)Vise La Reclame (Ignatus)
5)La Chancon Des Vieux Amants (Sasha Andres) 6)La Rua Madureira (Irene Jacob)
B1)Lettre Au Chef De Gare De La Tour Carol (Sasha Andre)
2)Samba Savanah (Ignatus) 3)Je T'ai Toujours Aime (Katerine)
4)Jouer Du Bugle (Katerine) 5)Encore (Sasha Andres)
- Produit par Steve Arguelles, The Recyclers et Quentin Rollet
- Benoit Delbecq (piano,piano prepare,claviers)
Noel Akchote (guitare,basse,violin,bruits),
Steve Arguelles (batterie,percussions,arrangements);
Katerine, Ignatus, Sasha Andres et Irene Jacob (voix),
Olivier Glissant (accordeon sur B2)

France の free jazz / improv. シーンで今最も生きのいい活動をしている trio
The Recyclers の新作は、ゲストの歌手を招いての、カヴァー曲集。Jacques
Brel のシャンソンや Serge Gainsboarg の歌もあるが、Brigitte Fontaine の
曲が3曲もあるのは、さすが free jazz / improv. あがりの The Recyclers 。

ゲストの歌手も豪華、最近の French pop というか nouvelle chancon シーンで
話題の Philippe Katerine a.k.a. Katerine、最近ソロアルバムを出した
ex- Les Objet の Jerome Rousseaux a.k.a. Ignatus が3曲歌っているが、
最も話題なのは、映画女優の Irene Jacob が1曲歌っているということ。
Sasha Andres という女性歌手については、残念ながらよくわからない。

といっても、この盤はそういった話題性だけの内容ではない。The Recyclers は
いつものような free improv. 色濃い演奏はしていないが、ちょっとした
ズレ具合が、ぐっと歌を異化している。A3 の打ち込み風の高速ビートを生で
やってみせるところなど、さすが。A5 は Noel Akchote の guitar が Arto
Lindsay のようにギリギリって音を立てるところが、Sasha の歌とあいまって
いい。そう、Arto Lindsay がいかにもやりそうな曲ではある。

と、Serge Gainsbourg, Jacques Brel, Leo Ferre の曲が並ぶ chancon っぽい
A面の方がポップだが、Pierre Barouh や Brigitte Fontaine の曲が並ぶ
Saravah 色濃いB面の方は、その地味さの中ながら、歌と The Recyclers の
演奏の組み合わせが生きているように思う。

いかにも伝統的な pop francais の様式を引用した音楽が日本でも受けている
Katerine だが、Valerie Leulliot (Autour De Lucie) も参加した Katerine,
_Mes Mauvaises Frequentations_ (Rosebud, ROB9640, '96, CD) にしても、
あまり異化されておらず、逆に反動的になりかねないものではあった。しかし、
この共演を契機に、次の Katerine の作品では The Recyclers が演奏する、
という話も聞く。The Recycles との共演で Katerine がどう変わるが楽しみ。

この企画盤をリリースをした Rectangle は、France のアナログ専門の
レーベル。そっけない白いジャケットと Czech プレスの重量盤が特徴だ。
The Recyclers, _The Recycles_ (Rectangle, REC A, '96, LP) で活動し始めた
ばかり。The Recyclers の guitar 奏者 Noel Akchote と Derek Bailey との
duo、_Close To The Kitchen_ (Rectangle, REC F, '97, LP) など、個性的な
リリースが多い。オーナーの Quentin Rollet は Christian Rollet (drums 奏者)
の息子で、まだ20歳代前半、企画にも若さを感じさせてくれる。CDでのリリースも
計画されているとも聞く。これからの活動も楽しみだ。

ちなみに、この _Morceaux Choisis_ は、300枚限定でピクチャー盤も出ている。

The Recyclers
_Visit_
(deux Z, ZZ84127, '97, CD)
- 1)Western Front 2)Slices 3)Steam 4)Tantarantana 5)Houle 6)Newby 7)WW
8)Dalant 9)Farfisa 10)Martha & Agathae 11)Steps 12)Mirabel/CDG 13)Deux
14)Extreme De Chez B. J. 15)Mopti
- Recorded in Paris, Tours, London and Vancouver during the summer of 1995
- Steve Arguelles (drums), Benoit Delbecq (piano), Noel Akchote (guitar);
1,5-7,11-13) Francois Houle (contralto clarinet), Kenneth Newby (suling),
Wolter Wierbos (trombone), Billy Jenkins (guitar)

さて、今年の前半 The Recyclers の deux Z からの新譜も、ゲスト入り。
といっても、ICP Orchestra の Wolter Wierbos など、こちらは free improv.
の色がぐっと濃いもの。

Steve Arguelle が Robert Dick (fl), Christy Doran (g) と組んだ A.D.D.
Trio でも演奏している "Steam" といった曲を、ここでもやっていることから
わかるように、A.D.D. Trio や R. Anderson / H. Bennink / C. Doran と
いった bass-less guitar trio と同じような、伸縮自在のスリリングな演奏を
聴かせてくれる。piano が入っており、bass-less piano trio ぽく様相が
音が入れ代わったりする展開がいい。

しかし、'94年の _Rhymes_ (deux Z, ZZ84111, '94, CD) にしても、そこでの
曲が中心の _The Recycles_ (Rectangle, REC A, '96, LP) は、録音が悪いせい
もあるのか密度が低くいまいちと感じていたのも確かだ。この _Visit_ は音の
めりはりもよく、ぐっと面白くなったと思う。Katerine らとの企画盤
_Morceaux Choisis_ を聴いて The Recyclers に興味を持った人にも、
是非聴いて欲しい。

The Recyclers の guitar 奏者 Noel Akchote は、Derek Bailey との duo
だけでなく、Noel Akchote M.A.O., _Red Boot_ (deau Z, ZZ84125, '95, CDS)
では jungle mix にも挑戦している。Costes との共演盤や Fred Frith との
duo の10"LP を Rectangle から、Marc Ribot, Eugene Chadborne との duo 集を
Winter & Winter からリリース予定。Instants Chevires では Stock Hausen
& Walkman と共演もしている。このフットワークの軽さは要注目だろう。

97/10/19
嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕