80年代半ばに Manchester, England で活動したレーベルに Ron Johnson という レーベルがあった。Stump, A Witness, MacKenzies, Big Flame, Jackdaw With Crowbar, Splat!, The Shrubs といったバンドを擁し、ちょっとスカスカ気味で ガチャガチャいうギターとぎくしゃくするビートを特徴とするパンク〜脱パンク 的な音をレーベルカラーといていた。 Various Artists, _NME C86_ (Rough Trade, ROUGH100, '86, LP) に4バンドも 収録されたが、その多くはシングルのみのリリースだったこともあり、出世頭の Stump 以外はほとんど注目されずに消えていった。その Stump の残したアルバム Stump, _A Fierce Pancake_ (Ensign, CHEN9, '88, LP) は制作に Holger Hiller を迎え、まるで Holger Hiller の electric pop での試みを guitar band で 実践しようかというような面白い作品だった。 Big Flame は、Ron Johnson のバンドの中でも最も攻撃的な3人組だった。 ちゃんとしたアルバムを残さなかったバンドで、もはやレコードを探すのも 難しいかと思っていたところ、John Corbett, _Extended Play_ (Duke Univ. Press, '94) の中で完全作品集をリリース予定と書かれているのを見つけた。 それから探していたのだが、最近になってやっとみつけることができた。 Big Flame _Rigour 1983-1986_ (Drag City, DC19, '94, CD) - Alan Brown, David Green, Gregory O'Keeffe Big Flame が 1983-1986 に残したほぼ全音源を収録したCDが、Chicago, IL, US の独立系レーベル Drag City からリリースされた。 70s末の Gang Of Four や Mekons (Various Artists, _The First Year Plan_ (Fast Product, F11, '79, LP) で聴くことができる。) や、やはり Fast Product レーベルで80s初頭に活動した Fire Engines (Fire Engines, _Fond_ (Rev-ola, CREV001CD, '92, CD) で聴くことができる。) のような、ギクシャク した脱パンクな音が、このCDで聴くことができる。US でこの手の音に対応する バンドといえば、Minuteman が挙げられるだろう。ジャケットデザインにも 共通するものがある。 The Ex や Dog Faced Hermans, (_0 + 2 = 1_ の頃の) No Means No のような De Konkurrel 配給レーベル系の音とも共通するものがあるかもしれない。 実際、The Ex は Ron Johnson のサンプラー盤に参加したこともあるくらいだ。 80年代後半の UK の _NME C86_ 的な indie pop/rock というと、The Wedding Present, Talulah Gosh, McCarthy のような正統的な guitar sound を持つ 音の方に注目が集まったし、それはもっともとは思う。Manchester からいうと Happy Mondays のような快楽主義的な pop が注目され出した頃でもある。 しかし、Stump や Big Flame のような、破壊的というか脱構築的ともいえる 音を出しているバンドの魅力も(最)評価されてもいいと思う。そして、その 手掛かりとして、この Big Flame のCDはうってつけだろう。是非、探し出して 聴いてみて欲しい。 ちなみに、Big Flame は86年には解散、Alan Brown はその後 Great Leap Forward (中国の「大躍進」の事) というバンドで活動を続けた。Josef K 後の Paul Haig を思わせるものがある展開の音なのだが。彼らが Ron Johnson に 残した音源を集めた Great Leap Forward, _Great Leap Forward_ (Communication Unique, CU004, '89, CD) というCDもある。 さて、最後にCDの曲目などを参考までに。 Big Flame _Rigour 1983-1986_ (Drag City, DC19, '94, CD) - 1)Sink 2)Sometimes 3)The Illness 4)Man Of Few Syllables 5)Debra 6)Sargasso 7)All The Irish (Must Go To Heaven) 8)!Cuba! 9)Where's Our Carol? 10)Why Popstars Can't Dance 11)Channel Samba 12)Breath Of A Nation 13)Every Conversation 14)New Way (Quick Wash And Bruch Up With Liberation Theology) 15)Cat With Catholic 16)Earsore 17)3 On Baffled Island (The Hard Rock Movement) 18)Let's Rewrite The American Constitution 19)XPQWRTZ - Alan Brown, David Green, Gregory O'Keeffe - 1-3) Originally Released as _Illness / Sink / Sometimes_ (Loughing Gun, Piaque001, '84/7, 7"). 4-6) Originally Released as _Rigour_ (Ron Johnson, ZRON3, '85/3, 7"). 7-9) Originally Released as _Tough!_ (Ron Johnson, ZRON4, '85/11, 7"). 10-12) Originally Released as _Why Popstars Can't Dance_ (Ron Johnson, ZRON7, '86/5, 7") 13) Originally Released in _Bludgeoned Magazine_ ('86, Cassette) 14) Originally Released in _NME C86_ (Rough Trade, ROUGH100, '86, LP) 15-17) Originally Released as _Cubist Pop Manifest_ (Ron Johnson, ZRON13, '86/11, 7") 14-19) Originally Released as _Cubist Pop Manifest_ (Constrictor, CON!00015, '86, MiniLP) 97/10/26 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕