Myra Melford & Han Bennink _Eleven Ghosts_ (hatOLOGY, 507, '97, CD) - Recorded 94/2/11-12 - Myra Melford (piano), Han Bennink (drums) Myra Melford は Chicago 育ちで NY を拠点に活動する女性 jazz piano 奏者。 Henry Thredgill、Leroy Jenkins のリーダー作に参加していたりしたが、 90年代に入って、やはり AACM, Chicago をバックグラウンドに持つ、ともに 元 Muhal Richard Abrams Quintet の Lindsey Horner (double-bass), Reggie Nicholson (drums) との piano trio で頭角をあらわしてきた。 しかし、その大傑作 Myra Melfrod Trio, _Alive In The House Of Saints_ (hatArt, CD6136, '93, CD) 以後、むしろ NY 的な Dave Douglas (trumpet) がらみの Extended Ensemble、The Same River Twice といった2管 quintet と なってから失速してしまった感もあるのだが。そんな彼女の Han Bennink (drums) との duo の '94年の伝説の録音がついにCD化された。それは期待を裏切らない 内容だった。お勧め。 Myra Melford の魅力は前衛的な面とファンキーさとを兼ね備えた自由に華麗に 舞い踊るかのような演奏だと思う。だから、管のバッキングをするかのような 演奏よりも、かつての trio や、この Han Bennink との duo の方が彼女の 演奏はぐっと映える。 trio 時代の彼女の曲は、"Evening Might Still" のような甘美なメロディと 流れるようなリズムを持つ曲と、"Frank Lloyd Wright Goes West To Rest" の ような Cecil Taylor をも連想させるパーカッシヴで変化に富んだ非調性的な曲と、 大きく2つの傾向に分かれるのだが、Han Bennink との duo ということで、 ここでは後者が中心。初期の彼女のテーマ曲ともいえる "Frank Lloyd Wrights Goes West To Rest" (彼女は Frank Lloyd Wright 設計の家で育ったらしい。) は ここでも演奏している。あと、彼女のリーダー作では自作曲しかやらないのだが、 コミカルなスタンダードの小曲を3曲演奏しているというのも、Han Bennink との 共演ならではかも。これが、また、このCDの中でいいアクセントになっている。 Han Bennink は Holland 出身の drum 奏者。Misha Mengelberg 率いる ICP (Instant Composers Pool) の主要メンバーであり、欧州の free jazz / improvisation シーンの代表的な drum 奏者である。 というわけで、併せて ICP (Instant Composers Pool) 関係のCDを3枚まとめて。 まずは、Myra Melford & Han Bennink, _Eleven Ghosts_ をリリースした Swiss の Hat Hut の新レーベル hatOLOGY からの新作。 Misha Mengelberg _The Root Of The Problem_ (hatOLOGY, 504, '97, CD) - Recorded 96/5/17-19 - Misha Mengelberg (piano) on 1-9; Steve Potts (alto & soprano sax) on 4,6,7; Thomas Heberer (trumpet) on 2,5,9; Michel Godard (tuba,serpent) on 1,5,6,9; Achim Kremer (percussion) on 3,7,8. ICP の大将 Misha Mengelberg は、最近は現代音楽づいているらしくて、 Louis Andriessen や Reinbert de Leeuw と親交を深めたり、ピアノの先生 したり、交響曲を委嘱されているようだが。そんなせいか、この作品は ICP 的 ジャズ脱構築ユーモア色がぐっと薄まった感もある。 このCDには Misha を中心に5人が曲ごとに2〜3人での演奏が収録されている。 音数少なく淡々とした世界がくり広げられている。渋い。 このCDで聴き物は Steve Lacy の長年の盟友 Steve Potts の sax。Steve Lacy の バンドでは、静の Lacy に動の Potts と、極めて対称的な演奏を聴かせて くれる Steve Potts が、ここではまるで Steve Lacy のような (笑) 演奏を 聴かせてくれるのだ。Potts にも、こういう演奏できるのかー。 さらに、ICP レーベルからの新作2枚を軽く。 Walter Wierbos _Caliber_ (ICP, 032, '97, CD) - Recorded 95/12/1 - Walter Wierbos (trombone) ICP Orchestra を中心に活躍する trombone 奏者のソロ即興。フリーキーな音を いろいろ駆使しているけど、1時間余はちょっときついかな。 Tobias Delius 4tet _The Heron_ (ICP, 033, '97, CD) - Recorded 97/6/7 - Tobias Delius (tenor saxophone), Tristan Honsinger (cello), Joe Williamson (bass), Han Bennink (drums) cello 入り tenor sax quartet による即興。Tobias Delius と Joe Williamson は初耳。Delius は意外と泥臭い sax の音。全体に jazz 的なニュアンスが強く、 4ビートになったりするのは、ICP らしいかもしれないが。cello - bass - drums という組み合わせは、cello と bass がぶつかるかと思いきや、うまくいっている。 ちょっと決めてに欠く気もするけれど。 ICP のリリースは Misha Mengelberg, _Mix_ (ICP, 030, '95, CD) ぶりだと 思うのだが、Cat. No. で 031 がとんでいる。97年頭の BVHaast のカタログにも 載っていない。気になる。 97/12/21 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕