Mitterrand 時代のフランスの音楽特集、第二弾。 という程ではないかもしれないが。 Elli Medeiros _Toi Mon Toit... etc_ (Barclay, 537 788-2, '97, CD) - 1)Toi Mon Toit 2)Bom Bom 3)A Bailer Calypso 4)Marie 5)Tango Salvaje 6)Red Roses 7)Fugu 8)The Wheel Of Time 9)Vanille 10)Whoo Are You 11)Chica Chica Bongo 12)Plastic Faces 13)Lonely Lovers 14)For You 15)Birthday Party 16)La Rubia - 1-10)Elli Medeiros (1985-1989) Produced by Elli Medeiros and Ramuncho Matta. Elli Medeiros (vo), Ramuncho Matta (g), Jannick Top (b), Don Cherry (tp), etc. - 11)Elli & Yacno (1984). Elli Medeiros (vo), Yacno (p), etc. - 12-15)Stinky Toys (1977-1979). Elli Medeiros (vo), Albin Deriat (b), Herve Zenouda (ds), Jacno (g), Bruno Carone (g). - 16)Elli Medeiros (1997). Produced by Elli Medeiros and Dimitri Tritikovoi. The Recyclers が Katerine 等をフィーチャーして制作した The Recyclers, _Morceaux Choisis_ (Rectangle, REC I, '97, LP) で、Brigitte Fontaine, _Comme A La Radio_ (Saravah, SHL1018, '70?/'92, CD) の曲をカヴァーして いるのを聴いて、この30年余りの余白を埋めるもはないのだろうか、と、ふと 思った。そして、そのときに頭を過ぎったのが、Elli Medeiros だった。 そんなところ、ちょうどよいタイミングで、彼女の編集盤がリリースされた。 ベージュの地に黒い線で粗く描かれた女性の顔のイラストのジャケットは、 いかにも「オシャレなフレンチ・ポップ」を思わせるものだが、CDを取り出すと、 トレイの下に、パンク流儀のポスターが見える。76年の London の 100 Club でのギクのもので、ラインナップは、Sex Pistols, Clash, Subway Sect, Suzie And The Banshees, Stinky Toys 。この、伝説的なフランスのパンク バンド Stinky Toys の女性歌手が、この Elli Medeiros だ。 この編集盤には、Stinky Toys の2枚のアルバムから4曲が選ばれている。 Stinky Toys のアルバムはCD化されておらず、僕も名前しか知らなかったので、 こうしてこのCDで演奏が聴かれるようになったのは嬉しい。こうして聴くと、 100 Club で共演したようなロンドン・パンクの音に比べて、明るい感じの曲だ。 むしろ、少し粗めのロックという感じかもしれない。といっても、英語で歌って いることもあり、フランスならではの色ではないように思うが。 ただ、Elli Medeiros の活動の最盛期は、80年代後半 Ramuncho Matta (Crammed Disc から数作アルバムを出している。) と共に活動していた頃だろう。 このCDの前半10曲を占めており、やはりこのCDで一番面白いところだろう。 1985年のライブの録音の "Marie" では Bruce Smith (ex-The Pop Group, Rip Rig + Panic) がドラムを叩いていたり、3曲で Rip Rig + Panic で客演 したこともある Don Cherry がラッパを吹いていたり、ということからも想像 つくように、ニューウェーヴがかったソリッドなファンクな音だ。ただ、 Rip Rig + Panic ほど混沌とした感がなく、むしろ Pigbag や Maximam Joy などに近い雰囲気がある。Elli Mederios の歌声もフランス語であるが、 低く落ち着いた突き放した感じがいい。曲によっては、Au Pairs, _Sense And Sensuality_ (Kamera, KAM010, '81, LP) を思わせるものがある。 この頃の Elli Medeiros のアルバムは _Bom Bom_ (Barclay, '87) など国内盤も リリースされたが、盛り上がらないまま、もはや入手困難になっている。 この編集盤で是非聴いて欲しい。 最近、彼女は活動を再開したようで、その新録の曲が最後に一曲収録されている。 もはや Ramuncho Matta とは別れたようなのだが。この一曲を聴く限り、 全体に比べ、緊張感を欠くポップ曲で少々残念である。 Elli Medeiros 名義ではないが、関連した面白い作品がいくつかあるので、 併せて紹介しよう。 Brion Gysin _Self-Portrait Jumping_ (Made To Measure, MTM33CD, '93, CD) - Produced by Ramuncho Matta - Brion Gysin (vo), Ramuncho Matta (g,key,vo), Don Cherry (tp), Elli Medeiros (vo), Steve Lacy (sax), Lizzy Mercier Descloux (vo), Caroline Loeb (vo), Abdoulaye Prosper Niang (ds), Polo Lomberdo (konks), etc ビートニク (Beatnik) 詩人 Brion Gysin が Ramuncho Matta と組んで82〜92年の 間に録音した音源を集めたCD。Brion Gysin の詩の朗読に Ramuncho Matta が 曲を付けたものだが、ゲストも、Elli Medeiros や当時のそのバンドのメンバー、 Don Cherry や Steve Lacy、Lizzy Mercier Descloux など、豪華だ。 Brion Gysin のレコードというと、Brion Gysin & Steve Lacy, _Songs_ (hatArt, 6045CD, '81/'89, CD) という名盤があるが、そちらのフリージャズ的な 展開に対し、この _Self-Portrait Jumping_ (にも Steve Lacy は一曲で参加して いるが) はもっと、ポップな仕上がりだ。悪くはない。 Don Cherry _Home Boy_ (Barclay, 827 488-2, '85, LP) - Procuded by Ramuncho Matta - Don Cherry (vo,doussn' gouni,trompinette,p,synth,melodica), Ramuncho Matta (g), Jannick Top (b), Claude Salmieri (b), Negrito Trasante (bongos,congas,talking drum,rhythm box), Elli Medeiros (backing vo), Abdoulaye Prosper Niang (ds), Jean-Pierre Coco (congas), Fil Mong (b), Polo Lomberdo (konks) Ramuncho Matta 制作による、Don Cherry のアルバム。当時の Elli Medeiros の バンドのメンバーをバックに、Don Cherry が自身の歌詞の歌うというポップ・ アルバムで、"Rappin' Recipe" ではラップまで披露している。珍盤という意味 では面白いと思うが、マニア向け感は否めない。薦められるものではないかも。 これ、かつて、日本盤でCDもリリースされたはずなのだが、他にCD化されて しかるべき Don Cherry の作品があるだろ、という気もする。 98/1/18 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕