Pell Mell _Star City_ (Matador, OLE288-2, '97, CD) - Produced by Tchad Blake - Robert Beerman, Steve Fisk, Greg Freeman, David Spalding 80年代から活動するインストゥルメンタル・ロック・バンド Pell Mell の前作 _Interstate_ (DGC, DGCD-24807, '95, CD) から久々の新譜は、メジャーの DGC を 離れて、独立系レーベルの Matador から。 Pell Mell は、SF Seals や Thinking Fellers Union Local 282 の制作の Robert Beerman、かつては Beat Happening の制作で今は Calvin と The Halo Benders を組む Steve Fisk など、むしろ裏方的な活動が目立つミュージシャン たちのプロジェクト。実際にスタジオに集まって曲作りするのではなく、お互いに 離れ離れに住んでいるためにテープなどを交換して曲作りをしている、という エピソードも聞く。しかし、その制作の話から想像されるほど表面的には音作りに 凝った感じはせず、むしろ、The Feelies のようなミニマルで疾走感あるギターの カッティングも気持ちいい音を特徴にしていた。 新作では、Mitchell Froom とのコンビで Suzanne Vega, Richard Thompson, Los Lobos, Soul Coughing, Chibo Matto 等の作品で印象的な音作りをしてきている Tchad Blake を制作に迎えている。そのためか、今までのセルフ・プロデュースの 作品と、若干、感触が異なっている。特に、ちょっと歪んだ感じのギターの音や オルガンっぽい音を隠し味に使っている所など、はやり Tchad Blake の技だろう。 しかし、確かに疾走感のあるアップテンポな曲が減ってダブを思わせるような 音空間構成のダウンテンポな曲が増えたかもしれないが、ギターのカッティングが 生むノリもうまく生かされていると思う。 Tortoise にしても、Pell Mell や Love Tractor のような80年代にUSの独立系 レーベルから出てきたような、実験的なインストゥルメンタル・ロック・バンドの 系譜に連なるものがあると思う。最近になって Tortoise を好んで聴くように なった人に、Pell Mell をぜひ再発見して欲しいと、僕は思う。 ちなみに、現在CD化されている Pell Mell の過去の作品は以下の通り。 Pell Mell, _The Bumper Crop_ (SST, SSTCD158, '87, CD) Pell Mell, _Rhyming Guitars_ (SST, SSTCD241, '90, CD) Pell Mell, _Flow_ (SST, SSTCD278, '91, CD) Pell Mell, _Interstate_ (DGC, DGCD-24807, '95, CD) 「韻を踏んだギター」「流れ」「インターステート (USの高速道路)」など、彼らの 音を想像するのにうってつけの題名かもしれない。是非、聴いてみて欲しい。 _ _ _ SST レーベル時代の作品については http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/95053002、 前作 _Interstate_ については http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/95050204 に 紹介記事があります。 98/2/4 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕