The Chromatic Persuaders _The Chromatic Persuaders_ (Timescraper, TSCR9617, '97, CD) - Produced by Neal Kirkwood & Lindsay Horner - Mark Feldman (vln), Neal Kirkwood (p), Lindsey Horner (b), Tom Rainey (ds) ヴァイオリンがフロントのピアノ・カルテットという若干変則的な構成だけでなく、 NY界隈で活躍している一癖あるフリー・ジャズ/即興シーンのミュージシャンの 顔合わせから、同じ組み合わせの Matthew Shipp Quartet まで混沌とした雰囲気は ないだろうとは思ったものの、現代音楽に近い辛気臭い展開を予想していた。 しかし、その実態は、グルーヴ感のあるビートと、特にピアノ以上に派手目に メロディを弾くヴァイオリンの音色も明るい、ノリのいい作品だった。特に、 ヴァイオリンがよく歌っている感じのするのが気持ちいい。 ただ、ちゃんと作曲された作品だと思わせるところがあって、もっと外した所も 見せて欲しいと思ってしまうことろがある。旋律にしても展開にしても、保守的な 印象すら受ける。これでは、単なるおしゃれ風 B.G.M. になってしまう。作品の 中に、そういう甘さを引き締める要素が欠けるかな、という気もする。 といっても、聞き流すように流しておくには、適度な作品かもしれない。という わけで、けっこう楽しませてもらっている。ううむ。 Mark Feldman は Dave Daglas Five のメンバーであるし John Zorn のプロジェクトで よく名前を見る。Lindsey Horner はかつて Myra Melford Trio のベーシストとして ぶっとい音を鳴らしていた。Tom Rainey も Tim Berne の trio で叩いていたりする。 そんな中、Neal Kirkwood だけはノーチェックだったのだが、同じレーベルから リーダー作をリリースしているので、聴いてみた。 Neal Kirkwood Octet _Neal Kirkwood Octet_ (Timescraper, TSCR9612, '96, CD) - Recorded 95/7/21-22. - Produced by Bobby Previte - Neal Kirkwood (p), Jack Walrath (tp), Tom Varner (fh), Ed Neumeister (tmb), Sam Furnace (sax), Billy Drewes (sax), Lindsey Horner (b), Tom Rainey (ds) p, b, ds のリズム隊は The Chromatic Persuaders と同じ。フロントにブラス三本、 サックス二本の管。Duke Ellington の "Portrait Of Sidney Bechet" を演って いるくらいで、ビッグバンドっぽい。T. Monk, "Bye-ya" とか好きな曲もやって くれているので、悪くはないのだけど。ビックバンドという構成というよりも、 カチッと作り込んであるような印象を受けるところが、物足りないかな。 この、Neal Kirkwood Octet や The Chromatic Persuaders をリリースしている Timescraper というレーベルは96年頃から活動を始めた Berlin, Germany の レーベル。まだ、6〜7タイトルしかリリースが無いようだ。ここで挙げたCDは、 比較的知られたミュージシャンの作品だが、店先で見る限り他のCDはほとんどが 知らないミュージシャンだ。おそらく、NYとドイツのミュージシャンと思われる。 Vikas Rosenthal という人の粗いタッチときつめの色の抽象画をジャケットに 使った統一的なジャケットが特徴だ。ECM、BVHaast、hatArt といったヨーロッパ のレーベルによくあるのだが、この Timescraper も、Edition Wandelwiser と いう現代音楽のシリーズがある。こちらも、まだ7〜8枚のリリースのようだが、 John Cage, Christian Wolff, Alvin Lucier といった有名どころのほか、 名前をあまり見かけないような作曲家の名前も見える。こちらも紙の材質感を 生かした単色のシンプルなレタリングの統一されたジャケットが特徴だ。 少々気になるレーベルではある。 98/2/8 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕