Various Artists _Musica Futurista_ (Cramps, CRSCD046/047, '79?/'97?, 2CD) - Antologia Sonora a cura di Daniele Lombardi - Franco Casavola, Alfredo Casella, Aldo Giuntini, Luigi Grandi, Filippo Tommaso Marinetti, Silvio Mix, Virfilio Mortari, Daniele Napoletano, Francesco Balilla Pratella, Antonio Russolo, Luigi Russolo 大戦前の欧州前衛芸術運動の一つであるイタリア未来派の音楽を集めたCD 2枚組。 クレジットがイタリア語の上、文字組に統一性がないので、推測しかねるところも あるのだが、70年代に Cramps からリリースされていた作品がCD化され、去年 ('97年) 頃から出回っている。 Daniele Lombardi によって編纂されたアンソロジーで、その多くはピアノソロ。 おそらく D. Lombardi によって演奏されていると思われる。オーケストラのために 書かれた曲を、ピアノ曲として編曲し直して演奏しているものもあるようだ。 ピアノで演奏された曲について言えば、調性的な曲が並ぶ。当時のヨーロッパの 前衛音楽というと、A. Schoenberg らの新ウィーン派のような非調性音楽が出て きた頃だが、それらに比べると遥かに伝統的な音だ。未来派の宣言 (例えば F. Balilla Pratella, _Manifesto dei Musicisti Futuristi_ ('11)) が実践 されているとはおよそ言い難い。そういう意味では期待外れかもしれない。 CDの1枚目で唯一のピアノ曲以外の曲 Filippo Tommaso Marinetti, "Cinque Sintesi Radiofoniche" ('33) は具体(騒音)音楽だが、音から推測すると、当時の録音では なく、再現されたものと思われる。この13分余りの曲は、単純にいろんな具体音を 羅列しているようで、それが逆に面白い。 CD 2枚目の1曲目の intonarumoni (noise intoner、ノイズ発生器、という意味。) を使った曲 Luigi Russolo, "Risveglio Di Una Citta" ('13) は'77に再制作 されたものを使った'79年の再現演奏のようだ。ウィーンとうなるような機械音が 基調で、なかなか面白いものがある。ちなみに、ジャケットに使われているのは、 intonarumori の写真である。 と、この2曲が、このアルバムの聞きどころだろう。 あと、CDの2枚目には、20世紀初頭当時の録音と思われる音源がかなり収録されている。 Antonio Russolo, "Corale", "Serenata" ('24) や Filippo Tommaso Marinetti & Aldo Giuntini, "Sintesi Musicali Futuriste ('31)、Alfred Casella, "Pupazzetti" ('15)、Filippo Tommaso Marinetti, "La Battaglia Di Adrianopoli", "Difinizione di Futurismo" ('24) といった音源は、当時のSP盤から起したもの。 A. Russolo の2曲は、騒音を使ったもので、こういう騒音の使い方をしていたのか、 と興味深いが。 イタリア未来派の音を収録したCDといえば、Various Artists, _Futurism & Dada Reviewed_ (Sub Rosa, SUBCD012-19, CD) というものもあるば、このCDに収録されて いる音源はすべて _Musica Futurista_ に収録されている。 98/2/12 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕