薔薇の馨る二枚の音の静物画 ― 音の余白を探検する 神奈川県立音楽堂 (桜木町) 98/3/21, 18:00- - Jannie Pranger (messosoprano), Frances-Marie Uitti (violincello), Tomoko Mukaiyama (piano) - 権代 敦彦, "Rosario"; Salvatore Sciarrino, "Vanitus". 期待外れな公演であった。music theater な公演ということであったが、ほとんど 普通のコンサートと言って差し支えないものであった。 前半の 権代 敦彦, "Rosario" に関して言えば、PAが最悪。歌手が足りない分を テープで補っているのか、それとも最初から効果音的に入れるつもりだったのか、 判断しかねるが。その音が下品。いかにも、舞台脇のスピーカーから出ている と感じさせる音のうえ、それが舞台上の生演奏をかき消してしまっているのだ。 去年の Heiner Goebbels の公演のときも、このスピーカーからの音が気になった のだが、それでもまだ楽しめるものだったのだが。ピアニッシモなピアノやセロの 音など聞こえやしないし、Pranger の歌声はまだしも Uitti や Mukaiyama の声 などまるで届かない。多声性を意識した作品なのかもしれないが、スピーカー からの歌声が誰のものか判らないのだ。これでは…。クラッシック界隈の人は あまり効果音/PA操作慣れしていないのかなぁ、とか、ふと頭を過ぎってしまった。 作品の良し悪し以前の問題だよな…。 後半の Salvatore Sciarrino, "Vanitus" は生音だけ。全体に静謐で、繊細な音 使いは楽しめたが。Pranger の立つ位置によって、3人の音の力関係が変化して いくのが面白かったが、music theater 作品というには動きはほどんど無いもの。 ダンサーと共演した去年末のコンサートも楽しめたし、歌い舞うような Tomoko Mukaiyama, _Women Composers_ (BVHaast, CD9406, '94, CD) (特に Medireth Monk, "Double Fiesta") も素敵だったし、Frances-Marie Uitti, _Two Bows_ (BVHaast, CD9505, '95, CD) での二本の弓を駆使したセロの即興演奏もかっこよかっただけに、 このトリオならもっといろいろできただろう、という気がしてしまうのだが。 「薔薇の馨る二枚の音の静物画 ― 音の余白を探検する」と題している企画という 時点で、そういうことは期待してはいけなかったのか…。 98/3/22 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕