際物最前線のTFJです。 Denez Prigent _Me 'Zalc'h Ennon Ur Fulenn Aour_ (Rosebud / Barclay, 539254-2, '97, CD) - Denez Prigent (chant), Bruno Le Rouzic (biniou bras,biniou kozh), Loic Blejean (uilleann pipe), Jacques Beauchamp (bombarde), Kristin Nogues (harpes celtiques), Valentin Clastrier (vielle), Bruno Caillat (zarb), Cedric Berneau aka DJ Nem (scratch), Jean-Marc Illien (orgue hammond,rhodes,synthes,programmations), Arnaud Rebotini (programmations) フランスの folk / roots 系のレーベル Silex から2年ほど前に Denez Prigent, _Ar Gouriz Koar_ (Silex, Y225022, '96, CD) というアルバムをリリースしていた Bretagne の Celtic folk の流れを汲む歌手 Denez Prigent の新作が、なんと Katerine や Little Rabbits で知られるロック・ポップ系のレーベル Rosebud からリリースされた。 果たして、その内容は downtempo breakbeats 〜 drum'n'bass の背景に、 Celtic folk 風の歌唱や、うなる hurdy-gurdy や uilleann pipe, celtic harp と いった楽器の音が乗るというもの。Denez Prigent は以前にも Deep Forest 界隈の プロジェクトである Dao Dezi でも歌手としてフィーチャーされたことがあるので、 それをソロ作品として徹底した作品とも言える。 しかしだ、仕上がりが、Enya や Deep Forest のような healing / ambient music 風のものになりがちなのが、どうも物足りない。それはこういう trad 流儀の歌唱の 質のせいかのかもしれない。しかし、free jazz / improv のミュージシャンと folk 系のミュージシャンとの交流 (ここに参加しているミュージシャンであれば、 hurdy-gurdy の Valentin Clastrier がいい例だろう。) において聴かれるような テンションが、どうしてここであまり発揮されていないのだろう、と思う。 もしくは、Rachid Taha が Steve Hillage とのコラボレーションによって 作り上げてきた Arab の popular music と techno 〜 breakbeats の音楽の 折衷から生まれるような緊張感が、どうしてここにあまり聴かれないのだろう。 といっても、このCDに全く可能性が聴かれないわけではない。Prigent が早口で 歌うような曲は面白いと思うし、むしろ歌声なしで hardy-gardy が鳴っている ような曲など、もっと聴いてみたいように思う。と、これからの展開に期待して…。 98/3/22 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕