The Slits _The Peel Sessions_ (Strange Fruit, SFRSCD052, '98, CD) - 1)Love And Romance 2)Vindictive 3)New Town 4)Shoplifting 5)So Tough 6)Instant Hit 7)FM 8)Difficult Fun 9)In The Beginning 10)Earthbeat / Wedding Song - Produced by Tony Wilson. 1-4) Recorded 77/9/19. 5-7) Recorded 78/4/17 8-10) Recorded on 81/10/12 - 1-7) Ari Up (vocals), Viv Albertine (rhythm guitar,backing vocals), Tessa Pollitt (bass,backing vocals), Palmolive (drums,backing vocals) - 8-10) Ari Up (vocals), Viv Albertine (guitar,backing vocals), Tessa Pollitt (bass guitar,backing vocals), Neneh Cherry (backing vocal), Bruce Smith (drums), Steve Beresford (keyboard), Sean Oliver (bass) 70年代末から80年代初頭の London の punk 〜 post-punk を駆け抜けた女性バンド The Slits の John Peel Show を3回分収録したCDがリリースされている。 1〜7曲目は過去にリリースされたこともある音源であり、また、"Vindictive" を除き CD化されている The Slits, _Cut_ (Antilles, AN7072, '79, LP / Island Masters, IMCD90, '78/'90, CD) からの曲という意味で、以前から聴いてきた人に耳新しい所は ないかもしれない。 しかし、このCDで新たに聴かれる81年のセッションの3曲が興味深い。いまだCD化 されていないラスト・アルバム The Slits, _The Return of the Giant Slits_ (CBS, 85269, '81, LP) からの曲で、アルバム同様、Bruce Smith や Steve Beresford が参加している。メンバーからしてもそうだが、時期的に重なる New Age Steppers の サブセットとも言える音だ。New Age Steppers 同様の British reggae / dub の、 もしくは Pylon や初期の B-52's のような US のバンド風の軽い funk の背景に、 Ari Up らの歌声も77,78年のセッションよりもリラックスしたものになっている。 もちろん、_Cut_ からの7曲にしても、Dennis Bovell の制作が加わっていない分、 スタジオ・ライヴならではの粗さ (といっても単純な punk のものではない。) が 感じられ、_Cut_ とは違う、むしろ Au Pairs のようなギクシャクしてささくれ 立ったビート感のある魅力を感じるものになっている。 ただ、前半7曲と後半3曲の落差が大きい嫌いがあるが、編集CDではやむを得ないか。 ちなみに、この John Peel session の音源、最初は、77/9/19 録音分だけ The Slits, _The Peel Sessions_ (Strange Fruit, SFPS021, '87, 12") としてリリースされた。 その後、78/4/17 録音分を併せて、The Slits, _The Peel Sessions_ (Strange Fruit, SFPMACD207, '89, CD) として再発CD化されている。今回、さらに 81/10/12 録音分を 併せてCD再々発されたわけだが。追いかける身としては、こうして小出しせずに、 まとめて再発して欲しかった…。 実は、The Slits, _The Return of the Giant Slits_ (CBS, 85269, '81, CD) は 持っておらず、最近まで聴いたことがなかった。去年に、その日本盤に収録された "Earthbeat" の日本語版「大地の音」を聴く機会があったのだが、これが、 「♪ダイチ〜ノ〜オトガ〜スル〜」とカタコト日本語で歌った強烈なものだった。 The Slits や The Raincoats、Liliput のようなバンドの場合、そのフェミニス ティックな態度以前に、ガヤガヤ言っているようなその歌唱法に rock を脱構築 する力があると思うのだが、それを日本語に置き換えるとそういう感じでいいの だろうか、とかふと思ってしまった。 98/3/30 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕