Rachid Taha _Diwan_ (Barclay, 539953-2, '98, CD) - 1)Ya Rayah 2)Ida 3)Habina 4)Bent Sahra 5)Ach Adani 6)El H'Mame 7)Enti Rahti 8)Menfi 9)Bani Al Insane 10)Malheureux Toujours 11)Aiya Aiya - Produced by Steve Hillage - Rachid Taha (vo), Nabil Khalidi (oud,banjo,backing vo,additional perc), Hossam Ramsy (live perc), Amina Alaoui (vo), Steve Hillage (g,programming), Aziz Ben Salem (fl), Geoffrey Richardson (strings), Bob Loveday (strings), Pete Macgowan (strings), Kaseeme Jalanne (oud) 去年に Carte De Sejour 時代からのベスト盤をリリースした、怒れる在仏アラブ人 歌手 Rachid Taha の新作は、_Rachid Taha_ (Barclay, 517 968-2, '93, CD)、 _Ole Ole_, (Barclay, 529 281-2, '95, CD) に続いて、Steve Hillage (System 7) の 制作によるものだが、それまでの techno 〜 breakbeats 色がぐっと薄れた ルーツ志向が強いものだった。 自作曲は "Ida" と "Aiya Aiya" のみで、後はアラブ・ポップのカバー。モダンな アレンジがなされており、oud や生の strings、percussion (Hossam Ramsy も 参加している。) が生かされたアレンジになっている。"Ida" にしても、もろに rai (Algeria で生まれた pop) 風の曲だ。最近はほとんどフランス語で歌ってきた Taha だが、ここでは全曲アラビア語で歌っている。 しかし、rai の歌手 Khaled や Cheb Mami のような濃いコブシを回すことは無い Rachid Taha のしゃがれた歌声が、むしろ rai などには無い緊張感をもたらしている。 それがこのCDの最大の魅力になっている。 だが、締めくくりの自作曲 "Aiya Aiya" が、やはり最も彼らしいのかもしれない。 ライナーノーツにはこうある。「この歌の題は、サッカー場でフラストレーションを 発散しているアルジェリアの若者たちから聴かれた叫び声から取られている。 歌の主人公はこう言う。僕は何も見なかった、僕は何もしなかった、僕は何も盗ま なかった、僕は誰も殺さなかった、と。アルジェリアとそこでの狂信的な虐殺へ、 明らかに言及したものである。歌の主人公はひょっとしたら様々な目的を持つ 凶悪犯罪の無名の犠牲者を見たことがあるのかもしれない。その死はめったに メディアには上らないのだけれども。」 アルジェリアでは rai のようなポップは不道徳としてイスラム原理主義者のテロの 対象となっており、Cheb Hasni、Rachid Baba といった大物ミュージシャン、 プロデューサが暗殺されてきている。Khaled のような歌手は亡命同然の状態で フランスで活動している。そして、Rachid Taha は、アラブのポップをカヴァー したアルバムの最後で "Aiya Aiya" と歌う。僕は誰も殺さなかった…。 98/3/30 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕