Irene Schweizer - 橋本 一子 duo with Joelle Leandre 世田谷美術館 (用賀) 98/4/4, 18:30- - Irene Schweizer (piano), 橋本 一子 (piano), Joelle Leandre (contrabass) 「ツイン・ピアノ」という企画のとおり、まずは、Schweizer - 橋本 duo から 始まった。2台の蓋を外した grand piano を互い違いにぴったり置くという配置 での女性二人による演奏ということで、Marilyn Crispell & Irene Schweizer, _Overlapping Hands: Eight Segments_ (FMP, CD30, '91, CD) を連想させるが。 音としてはかなり趣は違う。橋本はヴァーティカル、というか、ある範囲で厚めの 音を出すのに対して、Schweizer はホリゾンタル、というか、シングルトーンで 飛び回る、という展開が多かったように思う。2曲目では、Schweizer は内部奏法 したり、演奏しながら足をパタパタ鳴らしたり。橋本もか細いさえずるような 声で応じたり。と、比較的長めの2曲で休憩。 後半は、まず、橋本 - Leandre duo で2曲。Leandre はちょっとおどけてみせる けれど、橋本は音以外ではあまり応じず。けど、前半よりは、リラックスした 雰囲気になった。 さらに、piano が入れ替わっての Schweizer - Leandre duo 。Les Diaboliques (Irene Schweizer, Maggie Nicols, Joelle Leandre の trio) などで、コンス タントに共演を続けているだけあって、慣れた感もある。Schweizer の piano の 椅子をずらす音と Leandre の contrabass の胴を擦る音から演奏に入ったが、 音だけでなく、特に Leandre が声をあげておどけた感じのパフォーマンスを するし、Schweizer も内部奏法や足パタパタ、さらには鍵盤足蹴りまで繰り出す、 逸脱気味の演奏。それも、客からも笑い声が出るくらいのリラックスした感じ。 特に、1曲目最後だったか、Schweizer が鍵盤の無いところを弾こうとして外して しまったふりをしたり、最後の Leandre の倒れるパフォーマンスは客のウケを おおいにとっていた。芸を感じる楽しさ。もちろん、音的にも、ふと曲が聴こえて きたり、それがあっというまにばらばらになっていったり。実に面白い。結局、 3曲やったと思うが、もっと観てみたかった。 で、最後は trio で1曲。アンコールは無かった。 こうして観ると、橋本の演奏はいまいちふっきれていなかった。内部演奏したり、 声を出したり、はするけど、どうも恐る恐るやっているというか、「演奏」を ぶち壊さない補助的な感じがするのだ。演奏における、逸脱の必然性というか、 それをする説得力が、他の2人に比べていまいち弱い。Schweizer や Leandre の 演奏は、演奏からの逸脱まで含めて、成立している。もちろん、芸風の違い、と いうべきもので、橋本も逸脱すべきだ、とまでは思わないが。 98/4/5 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕