Evan Parker with Noel Akchote, Lawrence Casserly and Joel Ryan _Live At "Les Instants Chavires"_ (Leo, CDLR255, '98, CD) - Produced by Evan Parker and Leo Feigin - Recorded live at Les Instants Chacires, 98/12/10. - Evan Parker (soprano saxophone), Noel Akchote (amplified guitar), Lawrence Casserley (signal processing instruments), Joel Ryan (computer) Evan Parker & Lawrence Casserley, _Solar Wind_ (Touch, TO:35, '97, CD) の 続編というかライブ盤ともいえる作品がリリースされた。楽器演奏を逐次リアル タイムで電子音響処理していくという構成。ただし、楽器演奏側に、Evan Parker の 他に amplified guitar の Noel Akchote が参加し、電子音響処理側に Lawrence Casserley の側に Joel Ryan が参加し、最後のセッションを除き、楽器演奏側は どちらか1人でそれに電子音響処理をどちらかが、もしくは両方が行うという、と いう形式を取っている。全6セッション中、最後のセッションのみ、4人全員参加 してのセッションになっている。 Evan Parker の音やその変形のさせかたは、_Solar Wind_ のものから大きく外れる ものではない。ただ、サックスの音がもくもくと沸き上がってくる感は減って、 むしろ断片的な感が増えた気もするが。3曲目にしても、もくもくきそうでこない わけだし。一方、Noel Akchote の音は弦を響かせるというよりギリギリとかき むしるような音が中心で、その処理も、持続音を用いるよりばらばらの音の断片を 寄せ集めていくとという展開が多い。で、4人が一度に会した6曲目が、賑やかと いうか音色の幅が広く、やはり一番面白いように思う。この4人のセッションで もっと聴いてみたいような気もする。 Leo Records の '98年春の Press Release によると、Evan Parker の "another electronic project" という。もちろん、第一のプロジェクトは、Evan Parker Electro-Acoustic Ensemble, _Toward The Margins_ (ECM New Series, ECM1612, '97, CD) だろう。しかし、第二のプロジェクトの方が興味深いし、今後の展開が 楽しみだ。 ちなみに、ジャケットに使われているのは、Kjell Bjorgeengen, _True Blanking_ というヴィデオ作品からのスチル・イメージ。この Kjell Bjorgeengen は、 Norway の現代美術作家で、『ノルウェー現代美術の3人 − 場としての表現』展 (原美術館, 97/11/1-98/1/18) でも、Evan Parker の sax のソロ演奏を音に使った ヴィデオ・インスタレーションを出展していた。この展示を観たのはこの Les Instant Chavires でのライヴのCDが出る前のことだが、_Solar Wind_ で展開 されている感覚に近いものを感じたものだった。Evan Parker Electro-Acoustic Ensemble, _Toward The Margins_ が音以上のものをあまり感じさせないのに対し、 Lawrence Casserley との電子音響作品はもっと映像等を意識したマルチメディア 指向であるような印象を受ける。おそらく、電子音響作品と直接のコラボレーション してはいないにせよ、Kjell Bjorgeengen のヴィデオ作品とも深い関係あるもの ではないだろうか。 98/5/10 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕