Waldemar Bastos _Pretaluz_ (Luaka Bop, 9 46481-2, '98, CD) - 1)Sofrimento 2)Rainha Ginga 3)Muxima 4)Kuribota 5)Morro Do Kussava 6)Minha Familia 7)Menina 8)Querida Angola 9)Kanguru - Produced by Arto Lindsay - Waldemar Bastos (g,vo), Jose Trinidade-Bato (lead g), Garcia Luzolo (b), Jose Araujo (perc,backing vo), Elias Concalves (ds,backing vo), Peter Scherer (key), Cyro Baptista (perc) 南西アフリカは Angola 出身のシンガーソングライター Waldemar Bastos の USデビュー盤が、David Byrne (ex-Talking Heads) のレーベル Luaka Bop から リリースされた。 Angola は60年代まで Portugal の植民地だった。その頃は Bastos も投獄され たりしたようだが、75年の独立後に本格的な音楽活動を始めたよう。しかし、 共産党の政権下では音楽活動を続けるのは難しかったよう。80年代頭には 東欧や旧宗主国の Portugal に行き、80年代は Brazil で生活していたとのこと。 Chico Buarque の制作で _Estamos Juntos_ というアルバムを出しているらしい。 現在は Portugal を拠点としているらしい。 このCDで聴かれる音楽は、ある意味で、こういった Bastos の背景を感じさせる ものになっている。Angola の言語 Kimbundu 交じりとはいえ、Portuguese で 歌われることもあって、かなり Brazil のポップっぽい。何も知らないで、 新しい MPB の歌手だ、と言われたら、そう信じてしまいそうなほどだ。 といっても、かつて Chico Buarque の制作でアルバムを作っているくらいで、 そうであっても不思議ではないが。それに、このアルバムの制作も、Caetano Veloso、Gal Costa、Marisa Monte など MPB の歌手のアルバムの制作を多く 手がけてきている Arto Lindsay だ。Peter Scherer (ex-Ambitious Lovers) も 参加しているが、たいして変な音いじりはしておらず、繊細な guitar の音と、 深みも感じさせる憂いのある歌声を生かした、モダンな制作になっている。 こう Brazil っぽさを感じさせる一方で、Zairean rumba や South African pop / jazz など中〜南アフリカに特徴的な軽快な rhythm guitar も随所に 聴かれる。Bhundu Boys (Zimbabwe の pop バンド) を連想させるところもある。 特に、samba (or bossa nova) meets mid-south African pop のような感じに なるときがあって、それがかっこいい。このような南部アフリカと Brazil の 音楽の出会いといえば、Johnny Dyani, _Witchdoctor's Son_ (SteepleChase, '78) や Weekend, _La Variete_ (Rough Trade, '82) で聴くことができる80年前後 のイギリスでの試みを思い出すし、特に歌声が無いときに、そういった音楽に 連なる感覚があると思う。 結果としては、Brazil と Africa の感覚をうまく生かした洗練された無国籍の pop となっている。お勧めしたい。 98/5/31 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕