Guenter Mueller recording live GOK Sound Studio, 吉祥寺 98/7/19, 15:00-19:00 - Guenter Mueller (ds,electronics), 大蔵 雅彦 (alto sax), 杉本 拓 (electric g), 大友 良英 (turntable) Christian Marcley や Jim O'Rourke との共演や、自身のレーベル For 4 Ears で 知られる、Swiss のドラム奏者 Guenter Mueller が来日している。ライヴをして まわる、というわけではないようだが、公開録音を行うということなので、それを 観に行ってきた。行ったのは、二日のうち、大蔵 雅彦 (alto sax), 杉本 拓 (electric g), 大友 良英 (turntable) と共演する初日の方。ちなみに、二日目は、 I.S.O. (一楽 儀光, 松原 幸子, 大友 良英) との共演のようであった。 第一セットは、Mueller - 大蔵 - 杉本 のトリオ。Mueller は electronics 中心で 大蔵の sax も断片的なキキキというフリーキー音が中心で静か目な展開。続く第二 セットも同じ面子だが、Mueller が叩き出したこともあり、大蔵の sax も鳴るよう になった。 第三セットは、Mueller - 大蔵 - 大友 のトリオ。Mueller と 大蔵 のラインで 叩きまくり/吹きまくりの展開になったときはどうなるかと思ったけれども、 途中二回ばかり electro-acoustic な雰囲気も見せ、最後は静かに終わった。 しかし、大友の存在感がなかったセットで、本人も満足できるものでなかったよう。 続いて同じセットで。今度は、大友の出すドローン的ともいえる音がテクスチャを 作り出していた感もあったが、音が大きくなるとどうしても存在感が薄くなった。 長めの休憩の後、さらにもう一回同じセット。こんどは静か目の展開となったが、 若干緊張感が減ったようにも感じた。 再び、Mueller - 大蔵 - 杉本 のトリオに戻って、演奏を三回。最初の二回は 静か目の展開だったのだが、杉本がギターをセミアコースティック? に持ち替えての 最後は、後半になって Mueller が叩き出して音が大き目になって展開が変った。 杉本が音の大きさに付いていこうとしてか、弦を切ってしまったのが、印象的だった。 続いて、Mueller と 大蔵 のデュオで短い2セット。これは、遠慮せずに音を出し まくるという感じで気持ちよかった。で、最後に4人揃ってやはり短めの2セット。 やはり、Mueller と 大蔵 が主導権を握り、杉本 と 大友 が効果を出す、という 感じであった。 最後のセッションが象徴的だし、全てのセッションに参加していることからもわかる ように、全体としては、Mueller - 大蔵 の線が展開の主導権を握り、杉本 と 大友 は むしろ脇役に近かった。Mueller の無駄の無い動きで繰り出してくるカチカチと したドラミングは面白かったが。大蔵は音が鳴るときもすーって抜けるような音を 多用して、あまりアタックの強い音は出さないのだが、鳴るときはやはり大きい。 と、sax や drums の生楽器の強さというのを感じた演奏でもあった。おそらくCD化の 際にはバランスを直すのだろうが。 杉本のギターはあまりエフェクトをかけて音を伸ばすようには鳴らさず断片的。 こちらは意外とよい効果を出していた。Mueller - 大蔵 - 杉本 のトリオの演奏も 面白かったが、最近流行のベースレスのギタートリオの構成の域を出ないので、 ちょっと新鮮味は無いかもしれない。 Mueller の electrinics とかち合ってしまったか、居場所が無いというか存在感が 感じられなかったのが大友。Mueller の electronics もいまいち効果的ではなかった ように思うので、Mueller にはドラムに専念してもらって、大友に居場所を作って あげた方が、展開は面白かったかもしれない。ちなみに、Mueller の electronics の セットは手作りっぽくて、ドラムセットの前で不安定に揺れていたのも印象的だった。 あと、マウス状の形のものでパタパタと叩きまわっているときがかなあったのだが、 あれはいったい何だったのだろうか。 さて、このセッションに参加していたギター奏者 杉本 拓 だが、最近、Swiss の Hat Hut レーベルの新シリーズ hatNoir から、ソロアルバムをリリースしている。 Taku Sugimoto _Opposite_ (hatNoir, 802, '98, CD) - Recorded 97/4/24,25,29 - Taku Sugimoto (guitar) 経堂にある、ギャラリー・ド・ カフェ伝で録音された、杉本 拓 のソロ即興。 やはりエフェクトなどで音を歪ませて伸ばすことはせず、弦をひっかくというより 叩いているような単音が中心。ポーンという、多く取られた音の間が面白い作品だ。 表示上の曲は短く1〜2分程度のものが中心だが、むしろ明確な曲の切り替えは無い。 このシリーズの第一弾は Loren MazzaCane Conners, _A Possible Dawn_ (hatNoir, 801, '98, CD) は、ひしゃげたようなエフェクトをかけたギターの音が生む壊れ かけたブルース感なのに対して、この 杉本 拓 のギターの音はぐっと抽象的な 感じになっている。しかし、どちらも、electro-acoustic な傾向のあるギター 演奏という点では共通していると思う。ジャケットの灰色といい、こういう レーベルのカラーで行くのだろうか。 98/7/19 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕