Tomoko Mukaiyama _Hello Pop Tart_ (BVHaast, CD9801, '98, CD) - 1)Aeolian Harp (Henry Cowell) 2)Celestial Railroad (Charles Ives) 3)Graceful Ghost Rag (William Bolcom) 4)XIV (John Zorn) 5)Hymne A L'Amour (William Bolcom) 6)The Little House I Used To Live In (Frank Zappa) 7)Winnsbore Cotton Mill Blues (Frederic Rzewski) 8)Hello Pop Tart (David Dramm) - Tomoko Mukaiyama (piano,synthesizer,vocal); On "Hello Pop Tart" with W'all Nuts who are Anne La Berge (flute), Cor Fuhler (electronic organ), Wolter Wierbos (trombone), Hans van der Meer (percussion), David Dramm (vocal) 前作 _Woman Composers_ (BVHaast, CD9406, '94, CD) は女性作曲家による 現代音楽作品を取り上げるという企画盤だった Amsterdam, Holland 在住の ピアノ奏者 向井山 朋子 の新作は、アメリカの作家による現代音楽作品を とりあげたものになっている。ちなみに、去年末の日本での公演で演奏した 曲が3曲含まれている。 その3曲のうち、内部奏法が美しい Henry Cowell, "Aeolian Harp" を除く2曲 Charles Ives, "Celestial Railroad" と Frederic Rzewski, "Winnsbore Cotton Mill Blues" は、ポピュラー音楽をモチーフに用いたノリの良さが楽しかった と思っているのだが、ここでもそれは楽しめる。他にも、John Zorn や Frank Zappa のように、ポピュラー音楽のほうが主とみなせる作曲家の作品も とりあげているし、他の曲 William Bolcom, "Graceful Ghost Rag" も、 ご機嫌なrag のダンス曲だ。実験的なジャズやロックを楽しんできている人 なら、普通に楽しめる作品にもなっていると思う。 しかし、このアルバムの一番の聴きどころは、最後のタイトル曲 David Dramm, "Hello Pop Tart" だろう。向井山 は Maarten Altena Ensemble のメンバー として活動していたことがあるのだが、そのときにそのバンドで彼女が歌う ために作られた曲という。この曲では、向井山 は歌っているのだが、それは _Woman Composers_ での Meredith Monk, "Double Fiesta" のような美しい ヴォイス・パフォーマンス的なものではない。W'all Nuts (メンバーはやはり Maarten Altena 界隈のミュージシャンだ。) のヘタウマなポップ (いちおう R&B 風) といった演奏をバックに、地声でそれも音程も外し気味にたどたどしい 発音で (Dramm は英語ネイティヴではない彼女にとって発音しずらい歌詞を わざと付けたという。発音を間違えて理解不能となるように。) ポップな歌を 歌っているのだ。それも、♪Good-bye modern art, Good-bye genius, Hello pop tart! と。 そして、art から pop へというコンセプトは、固めの透明なビニールでできた CDのパッケージにまで徹底している。そのデザインもポップなもので、 現代音楽のコーナーに置かれていなければ、ポップかロックの女性歌手の CDかと思うくらいのものだ。 そして僕はその皮肉に苦笑いしながら、彼女の歌声を聴いている。Hello pop tart! 98/8/18 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕