Squarepusher _Music Is Rotted One Note_ (Warp, WARPCD57, '98, CD) - 1)Chunk-S 2)Don't Go Plastic 3)Dust Switch 4)Curve 1 5)137 (Rinse) 6)Parallelogram Bin 7)Circular Fluxing 8)Ill Descent 9)My Sound 10)Drunken Style 11)Theme From Vertical Hold 12)Ruin 13)Shin Triad 14)Step 1 15)Last Aproach - Written and Produced by Tom Jenkinson. 前衛 drum'n'bass と呼ばれた1stアルバム _Feed Me Wierd Things_ (Rephlex, CAT037CD, '96, CD) から遠くへ来たものだ、と、聴いて感慨深いものがある、 Squarepusher (Tom Jenkinson) の新作。もはや、drum'n'bass といえるような 要素はほとんど無い。 かといって、前作 _Hard Normal Daddy_ (Warp, WARP50CD, '97, CD) で聴かせた ズブズブに歪んだキーボード音やスクラッチ音も用いて作り出していたビート感、 ライヴで聴かせたようなパンク風の前つんのめりビートも、このCDには無い。 そういうビート的な要素は、半年ほど前にリリースされた別名義での Chaos A.D., _Buzz Caner_ (Rephlex, CAT056CD, '98, CD) に引き継がれている。 このアルバムの音の感触は _Feed Me Wierd Things_ に近い。それも、それに収録 されている "The Swifty" のような、リズムを刻むというよりフリードラミングに 近い曲に。電子的に合成加工された音も用いられているが、楽器音風の音が耳を 惹くかもしれない。リズムが明確に無いところも多く、free jazz / improv. 的な 展開になることもしばしば。jazz / funk っぽさが入ると electric Miles を 薄めたような感じに聴こえることもあるが、許容範囲か。"Squarepusher Theme" の ようなハッと耳を惹くようなキャッチーなフレーズも欲しいとは思うが、それでも このアルバムの淡々とした音世界は気に入っている。_Hard Normal Daddy_ や Chaos A.D., _Buzz Caner_ よりも、この方向性の方が良いように思う。 しかし、この Tom Jenkinson をはじめ、Richard James (a.k.a. Aphex Twin) や、 Luke Vibert (a.k.a. Plug)、Mike Paradinas (a.k.a. Mu-Ziq) といった「前衛」 techno 〜 breakbeats が'96年にどっと注目されてから2年、この界隈も失速気味の ように思う。去年の Aphex Twin, _Come To Daddy_ (Warp, WAP94CD, '97, CDS) も平均的な出来だったと思う。 Autechre _lp5_ (Warp, WARPCD66, '98, CD) - 1)Acroyear2 2)777 3)Rae 4)Melve 5)Vase In 6)Fold 4, Wrap 5 7)Under BOAC 8)Corc 9)Caliper Remote 10)Arch Carrier 11)Drane 2 その界隈で活動をしながら、中では目立つことが無かった Autechre。その新作 (5rd アルバム。正確には無題だが、Warp の web site をはじめ、通称で _lp5_ と 呼ばれれている。) は、そんな中では淡々とした魅力を湛えたものになっている。 相対的に魅力的に聴こえるのかもしれないが。_Artificial Intelligence_ シリーズの典型ともいえるようなちょっと複雑めのリズムは相変わらずで、 新奇性を衒った感じが無いのが、飽きずに聴かれる理由がもしれない。暫く前に リリースされて聴いてきたものだが、なんとなく、繰り返し聴いている。 Various Artists _We Are Reasonable People_ (Warp, WAP100CD, '98, CD) さて、こういった techno 〜 breakbeats を90年代初頭からリリースしてきた Warp も、シングルが100タイトルを越えたということで、それを記念するアルバムが やはり暫く前にだが、リリースされている。オープニングの Squarepusher / AFX, "Freeman Hardy & Willis Acid" など、いかにも「前衛」drum'n'bass といった 出来で、共演も話題性があるかもしれないが、全体としてはとりとめなく感じる。 _Artificial Intelligence_ シリーズほど強烈な音の方向付けもないし、_Blech_ (Warp, WARPCD44, '96, CD) のような繋ぎも無いこともあるのだろうが。 98/10/25 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕