Myra Melford solo 伊勢屋, 横浜市中区伊勢崎町7-152 (黄金町), tel.045-243-5806 98/10/31, 20:00-22:30 - Myra Melford (piano) 90年代の US の free jazz シーンで頭角を現した Chicago, IL 出身の女性ピアノ 奏者 Myra Melford の初来日ツアー。その第一弾のソロコンサートは、横浜は 伊勢崎町にあるジャズ喫茶/バーの伊勢屋。月に数回 free jazz / improv 系の ライヴをやっているのは知っていたが、行ったのは始めて。比較的、きれいな店 だった。 Myra Melford は、その力強いパーカッシヴな演奏から想像していたのに比べ、 非常に小柄な女性だった。髪をヴェリーショートにしていて、ちょっと少年っぽい 感じも。 CDで聴きつづけている限り、90年代初頭からの trio を解散して以来、作曲の構成も かっちりな分、どうも失速気味に感じる彼女の演奏なのだが。眼鏡をかけて譜面を 見ながら演奏し始めたのを観て、なるほど、という気も。Henry Thredgill の "Noisy Flowers" (Henry Threadgill, _Makin' Move_ (Columbia, CK67214, '95, CD) 所収。もちろん、Myra Melford も参加している。) など、比較的、静か目な曲を 演奏していた。そういう意味で、ちょっと物足りなかったのだが。途中の休憩の直前、 Don Pullen に捧げた曲は、彼女の blues / gospel 入ったパーカッシヴなピアノの 演奏のルーツの一人はやはり Don Pullen、と納得のノリのいい楽しい演奏だった。 そういえば、リズミカルな曲では特に、彼女は足でリズムを取りながら演奏する のだが、履いている小さいなショートブーツのファスナーの金具が、たいてい チャッチャッとリズムを刻んでいたのが、なんとなく可愛かった。動いている足を 見ていると、特に。 特に trio 時代に顕著なのだが、彼女の曲は、blues / gospel 入った大きくうねる 甘美なメロディと微妙に変化しながら流れるようなリズムを持つ曲と、Cecil Taylor をも連想させるパーカッシヴで変化に富んだ非調性的な曲の二面がある。休憩の後は、 その blues / gospel 入った曲を中心に演奏した。特に、Myra Melford Trio, _Now & Now_ (Enemy, EMY131-2, '91, CD) のオープニングを飾るドラマチックな "Shout" をはじめ、trio 時代を思い出させてくれる華麗な piano 演奏をしてくれた のが、とても嬉しかった。アンコールでは、彼女の初リーダー作 Myra Melford Trio, _Jump_ (Enemy, EMY115-2, '90, CD) のオープニングを飾る (そして、名盤 _Alive In The House Of Saints_ (hatART, CD6136, '94, CD) のエンディング でもある) タイトル曲 "Jump" を。"Jump" では、さすがに楽譜も観ずに演奏した。 けど、"Frank Lloyd Wright Goes West To Rest" のような圧倒的にパーカッシヴで 非調性的な曲もやって欲しかったかな。 演奏が終わった後、_Alive In The House Of Saints_ のジャケットにサインを 貰いながら、「_Jump_ や _Now & Now_ の頃から好きで聴いていましたが、これが 僕の一番好きな作品です。」と彼女に話しかけた。彼女は、けど、「これはずいぶん 昔の作品だから…。」と。確かに、もう4〜5年前の演奏の作品だ。Extended Ensemble や The Same River, Twice といった最近のバンドでの演奏を聴いていると、物足り なく思う一方で、むしろ trio 時代の試みに関しては彼女の中ではもう決着がついて しまったのかな、と感じるところもある。今回は、solo ということで、かつての ようにガンガン弾きまくった、ということもあるのかもしれない。 しかし、今のソロでさえこれだけパワフルで華麗な演奏を楽しめただけに、trio 時代 に演奏を生で聴きたかった、とつくづく思ってしまった。 98/11/1 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕