脱 punk 期の'79年から Manchester で活動している Vini Reilly のブロジェクト The Durutti Column の Factory 音源の再発CD化が第二期分4タイトルで完了した。 96年末に第一期分が出た後、97年春には第二期分もリリースされる予定だったが、 1年半遅れてのリリースだ。というわけで、第二期分からは、これを紹介したい。 (ちなみに、The Durutti Column について、第一期分のリイシューについては、 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/96122901 に記事がある。) The Durutti Column _Another Setting_ (Factory Once, FACDO74, '98, CD) - 1)Prayer 2)Pesponse 3)Bordeaux 4)For A Western 5)The Beggar 6)Francesca 7)Smile In The Crowd 8)Dream Of A Child 9)Spent Time 10)You've Heard It Before 11)Second Family 12)Amigos Em Portugal 13)Menina Ao Pe Duma Piscina 14)Lisboa 15)Sara E Tristana 16)Estoril A Noite 17)Favourite Descending Intervals 18)To End With - 1-11) originally released as _Another Setting_ (Factory, FACT74, '82, LP). Produced by Vini Reilly and Chris Nagle. Vini Reilly (vocal,instruments), Bruce Mitchell (percussions), Maunagh Fleming (cor anglais), Simon Topping (trumpet) - 12-18) originally released as _Amigos Em Portugal_ (Fundacao Atlantica, 165207-1, '83, LP). Written by Vini Reilly. Recoreded and mixed in the Valentim de Carvalho Studio by To Pinheiro da Silva and Jose Valverde. 1stアルバム _The Return Of The Durutti Column_ (Factory, FACT14, '79, LP) が punk の虚無主義に対する反動の一形態として、シチュアショニスト的なコンセプトの ジャケットと、スカスカなリズムボックスと感傷的だが展開しないギター・フレーズ に意味があったのだとしたら、2nd アルバム _LC_ (Factory, FACT44, '81, LP) 以降、 そのゼロ点から歩み出す過程だったのかもしれない。 しかし、アンサンブル化して曲構成が明確になっていくにつれて、次第に曲や演奏の 弱さが出て、先行する脱 free jazz な (fusion 的でもある) guitar 演奏に比べて 聴き劣りするものになって、いったのも事実だと思う。 3rd アルバム _Another Setting_ (Factory, FACT74, '82, LP) と、ポルトガルで リリースされた _Amigos Em Portugal_ (Fundacao Atlantica, 165207-1, '83, LP) は、脱 punk 期の緊張感を残している最後の時期の録音といえる音源だろう。 _Another Setting_ は、基本的に _LC_ の延長線上といえる音だが、cor anglais (double-reed の木管楽器。ちなみに、saxophone, clarinet は single-reed、 oboe, bassoon が double-reed。) やミュートした trumpet の音が入るが、色が 増えた感じはしない。淡々と沈んだ緩い旋律を吹くことが多いせいか、guitar の リズムも抑えられた感じがして、少し前のめりなリズム感が緩和されている。 Martin L. Gore が _Counterfeit EP_ (Mute, STUMM67, '89) でカバーした "Smile In The Crowd" や、自身が _The Guitar And Other Machines_ (Factory, FACT204, '87) で再演している "Bordeaux" など、良い曲が収録されているのも、 _Another Setting_ の良いところかもしれない。 _Another Setting_ は、このCD化にあたり、追加曲として _Amigos Em Portugal_ から12曲中7曲収録されている。このポルトガル盤の音源はおそらく初CD化だ。 音源は盤起こしで針のトレース音が聞こえるのが残念だが、マスターは失われて いるのだろうか。この頃のシングル曲やオムニバス収録曲に多いのだが、piano と guitar の二重録音といった感じの簡素な音が良い。ちなみに元のアルバムでは 1曲おきに安っぽいリズム・ボックスの音が入る。一方で、ドラマチックな曲調は、 むしろ、それ以降の作品にも繋がるところもあるかもしれない。 80年代前半の The Durutti Column のスタイルが完成した頃の音源が収録されて いるCDだ。_The Return Of The Durutti Column_、_LC_ に続けて、どうぞ。 98/11/23 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕