David Cunningham (ex-The Flying Lizards) のレーベル Piano が70s〜80sに 残した音源をCD化することで再活動しはじめたのは'95年。再発も一段落したのか 新録のリリースも始まった。まだまだ再発して欲しい音源はあるけれども。 Owada _Nothing_ (Piano, PIANO508, '97, CD) - 1)Hello 2)1234 3)Thirty Thirty 4)The New Instrumental One 5)Short G 6)Feeling Blue 7)Up + Down 8)Short G 9)Not Yours 10)Circle 11)30 Seconds With The Light Off 12)1-100 13)Short G 14)101-200 15)Low 16)High 17)Long G 18)One Whole Song 19)X 20)The Usual First One 21)1234 22)Nothing 23)Start Middle End - Produced by David Cunningham and Owada. Engineered by Ronnie Box. Recorded and mixed at Halicon Mountain & David Cunningham's Studio, 1997. - Martin Creed (guitar,vocal,keyboard), Adam McEwen (drums), Keiko Owada (bass,vocal). David Cunningham の制作による、ミニマルな3人編成による rock バンド。 というより、rock の語彙を組み替えて演奏してみせるバンド。David Cunningham というと、70年代末の脱 punk 期に The Flying Lizards で、安っぽい楽器音と dub の方法論を用いて rock を脱構築してみせたわけだけれども、ここでは そういう手法はとっていない。一聴した感覚は、_Chair Missing_ から _154_ に かけての Wire に近い。いや、ぐいぐい駆動感のあるベースラインや男女の歌声が 混じるところは、ESG、Bush Tetras、Pyron など、US の post-punk pop に 聴かれたものに近いかもしれない。 ここで聴かれるというのは、極端にミニマルなロックンロール、とでもいうものだ。 全体に曲が短く、例えば "1234" という曲では、"One, Two, Three, Four" という 掛け声の後にジャンジャジャジャジャンとロックンロール風フレーズ1小節だけ、 というものを5回繰り返す、という曲だったりする。"Hello" はその逆で、ジャン ジャジャジャジャンの後に "Hello" というのをひたすら繰り返すというものだ。 "Short G" に到ると、ジャンジャジャジャジャン一発6秒の曲だったりする。 "Long G" の方は "Short G" で弾いているようなフレーズを1分半ばかり繰り返し 弾いている曲だ。もっと長い曲にしても、"1-100" ではシンプルなロックンロールに ノッって、1から100まで数え上げるだけ。もちろん、"101-200" は101から200まで 数え上げている。"X" も同じような曲で A から Z まで発音していくもの。もう 少し展開のある曲も無いわけではないが。 と、説明してしまうと身も蓋も無いような曲が延々と続く。こういうやり口は、 ロックの持っている約束事の人工性を明らかにしてしまうようなところもあるが。 この作品が魅力的なのは、そのようなミニマルさが用いられている約束事の持って いる良さを逆に際立たせるような、ビート感ある演奏があるからとも思う。 確かに、脱 punk 期の70s末から20年経った今更なぜこういう方法論、と思う ところもあるけれども、ガシャガシャいうギターのカッティング、ぐいぐい 引っぱるようなビートの気持ちよさが楽しめるだけでも、良しと思える。 Angela Jeager + David Cunningham _Artificial Homeland_ (Piano, PIANO509, '98, CD) - Produced by David Cunningham. Recorded in London. Mixed by David Cunningham and Angela Jeager. - Angela Jeager (voices), David Cunningham (instruments); Charles Hayward (drumming) on 4,7,12,15. さて、一方、David Cunningham 自身のプロジェクトの方は、Angela Jeager という 女性歌手を迎えてのもの。Charles Hayward の生ドラムは入るところで、はっと 思わせるところもあるが、基本的に浮遊するような女性の歌声が ambient 風味の electronica な背景に乗ったもの。いささか平凡な出来で、残念だ。 98/11/29 嶋田 Trout Fishing in Japan