Mauricio Kagel _1898 / Music For Renaissance Instruments_ (Deutsche Grammophon, 459 570-2, '98, CD) - 1)1898 (1972-3) 2)Music For Renaissance Instruments (1965-6) - 1) Recorded at Rhenus-Studio, Godorf bei Koeln, 1973/9. Children of the "Hauptschule Peter-Griess-Strasse", Koeln-Flittard, Adam Bauer (tp), Kurt Schwertsik (horn), Armin Rosin (tmb), Robert Tucci (tuba), Brigitte Sylvestre (harp), Aloys Kontarsky (piano), Christoph Caskel (perc), Saschko Gawriloff (vln), Gerard Ruymen (viola), Siegfried Palm (violincello), Georg Nothdorf (doublebass) - 2) Recorded live on 1967/4/26. Interpreted by Colleium Instrumentale. Deutsche Grammophone が "20/21 The music of our time" という、デジパックの 奇麗なパッケージの現代音楽の新しいシリーズを始めた。その最初の5タイトルの 1つがこの Mauricio Kagel の作品だ。73年に Deutsche Grammophone 75周年を 記念して委嘱された作品 "1898" のCD化ともいえるものだが、ボーナス曲として "Music For Renaissance Instruments" が収録されている。 ジャケットに、violin のような弦楽器の木製の共鳴箱に金管楽器のベルを付けた 楽器の写真が使われている。これは Stroh-violins という楽器を参考に、Kagel が 発案した楽器で、"1898" のプロジェクトのために制作したもとという。 Stroh-violin は 1910年代に London で Charles Stroh という人によって発案 されたもので、木製の共鳴箱が無く、弦を張った棒状のものに金管楽器のベル状の ものを付けた弦楽器である。ブックレットに、楽器の写真や、1910年代の演奏の 様子の写真を見ることができる。この Kagel, "1898" は、この金管楽器のベルが 付いた violins を使って演奏した曲だ。 実は、このベルの付いた violins、以前に Mauricio Kagel に関する洋書を立ち読み したときに、その写真を見たことがあった。由来までチェックはしなかったけれども。 その写真を見て、この楽器はどういう音がするのだろう、と気になっていた。 だから、このCD再発で実際の音が聴かれるようになったのは、嬉しいものである。 しかし、このCDで聴く限りでは、普通の violins と音はたいして変わらないように 思うけれど。むしろ、音色的には、"Music For Renaissance Instruments" の方が 面白いかもしれない。むしろ、そういう形の楽器を演奏している、という視覚的効果 を狙ったものなのかな、とも思うところもある。曲としては、抽象的な感じのしない 現代音楽といったところか。 98/12/6 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕